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2010年の記事は以下のとおりです。

架線の偏位とエアセクション

 架線のストラクチャについてはリニューアル当初から一貫してBVEとしては標準的なモノを使い続けてきましたが、そろそろ周囲とのバランスで誤魔化しがきかなくなってきたので少し精密な物に置き換えました。今回は細かい部分の話題が多いため、一部を除きスクリーンショットはBVE5(試験版)のフルスクリーンで撮っています。低速回線の方は画像の読み込みに時間がかかるかもしれませんがご容赦下さいませ。 ファイル 15-5.jpg  直線区間ではほとんど分かりませんが、吊架線をカテナリー曲線風にしてみました。本当のカテナリー曲線(紐の両端を手に持って自然に垂らした時に出来る曲線)は計算が非常に難しいので適当に数値を弄って曲線化していますが、直線のままよりは見栄えのする物になったと思います。しかし、これで25mと 50mの前半・後半と、3種類のオブジェクトを25mおきに手動で配置しなくてはならなくなり、延伸の度に必要な工程数はかなり増えてしまいました。  また、ハンガー(吊架線からトロリ線を釣っている部品)も針金をクネクネ曲げたような簡単な造りですが、運転台から見て精密に見える程度に再現しました。テクスチャは貼らず、面の色を2色使って光の当たるところ・当たらないところを造り分けています。 ファイル 15-1.jpg  BVEユーザーの方なら直線区間の架線がジグザグに張られているのはご存じと思いますが、BVEでコレを再現するのは結構面倒。しかし先のカテナリー曲線の再現のため、いずれにせよ25mごとに架線を設置する必要があり、ならばついでに・・・と、ジグザグ偏位も再現することにしました。  左右の許容値は会社・路線によって違うようですが、あまり小さくては面白味がありませんので一般的に最大とされる±20cmに設定しました。架線を配置する数値としては、左寄りの-0.2m位置からスタートしたとして+0.46度振ってやると、25m前方で自線の中央である0.0m位置に移動します。次に0.0m位置からまた+0.46度振ってやるとその次の25m前方、始点から50mで+0.2m位置、つまり右寄りに移動します。今度は0.2m位置から逆に-0.46度振り、次の0.0m位置から-0.46度振ると、始点から100m位置で再び-0.2m位置、つまり左側に戻ってきます。曲線の前後や架線柱間隔の変わる場所で辻褄を合わすのに苦労することはあるものの、基本はこの繰り返しですので特に難しくはありません。ただ、25m毎に作業が必要ですので非常に面倒というだけです。  ちなみに今回はfreeobj構文で架線オブジェクトを配置をしています。rail構文でも構いませんが、連続する曲線部を除けばどちらにしても25m 毎の作業が必要であることと、制作に使用してるBVE4環境では使用可能なrailインデックスが15しかないため、そのうちの1つを占有してしまうのが嫌ということでfreeobj構文を使うことにしたのです。  ジグザグ偏位を再現すると架線柱の振れ止め/曲線引き装置や懸垂碍子の位置も左右に振り分けなくてはならなくなり、その修正作業に合わせて架線柱も一斉に改良しました。画像は省きますが、ポールの円柱化(コンクリート製の物に関しては頭部を丸めた)、ポールのテクスチャを数種類に分ける、ビームのテクスチャを陰影のあるものに変更、ポールにビームの影を付ける・・・などなど。 ファイル 15-2.jpg  で、その勢いのまま架線の張力調整装置も造りました。大層な名前ですが、要はオモリの数で架線を引く力を調整するだけの機械です。私のまわりではコレを「ターンバックル」と呼んで通じるのですが、最近は言わないのかな・・・と動画のコメントを見て思ったり。ちなみに線材の弛みを取る装置を総称してターンバックルと呼びます。  滑車の再現は面倒なので透過テクスチャで何とかしようと思っていたのですが、実際に作って配置してみると、運転席からはほぼ断面方向から見ることになるため、ペラペラの板オブジェクトではおかしなことになってしまいました。中が抜けているためcylinder構文も使えず、仕方なく座標を打ってモデリング。テクスチャは陰影を表現するだけの簡単なモノを貼り付けてヤッツケました。 ファイル 15-3.jpg  そうそう、動画のコメントで「cylinder構文にもテクスチャ貼れるよ」と教えていただいたので、コンクリート製のウェイトはその手法を試してみました。どの座標順に貼り付けられていくかの定義が分かってしまえばナルホドこれは楽チンですね。形状の複雑ではない円柱状のパーツは今後この方式で行くかもしれません。他のパーツは適当に座標組みし、細かな物ですからテクスチャも貼らずに色指定だけして完成です。  架線柱は専用の物を用意せず、従来の物に合体させて使うことにしました。画像は飯島駅を出て上下線が合流した部分の架線の末端ですが、ゴチャゴチャ感が出て良い感じです。テクスチャを貼らずに手抜きしたところも、これくらいのサイズ、かつ一瞬で画面外へ移動していくオブジェクトなのでそれほど気にならないと思います。 ファイル 15-4.jpg  先日「リアル化スパイラル」のお話をしましたが、今がまさにその状態で、架線まわりをリアルにしてしまうと張力調整装置を配置するにも理にかなった配置をしないと不自然になってしまい、ポンと置いて完了!では済まされそうにありません。  今まで架線の細部なんて気にも留めなかったのですが、架線の起点・終点の構造を撮り溜めた写真から推察し、2本の架線が並走するエアセクションを再現ました。画像は飯島~田切間のエアセクションですが、新しい架線が右側からスタートして寄り添い、1スパン分並走して従来の架線は左に逸れて張力調整装置に繋がります。物理的に接続されず空気を絶縁体としているから「エア」セクションなのですね。架線柱のビームに取り付けられた紅白の標識は「電車線区分標」。またエアセクションの架線はハンガーにオレンジ色の保護カバーが装着され、他と区別されています。  しかし飯田線のエアセクションを見ていると、この電車線区分標とオレンジ保護カバーのセットが装着されている所と無いところがあるのです。データ上でもこの違いを再現していますが、違いの意味がよく分かりません。き電区間の変わる(担当変電所が変わる)所のみ標識と保護カバーを付けているのではないか?と勝手に想像しているのですが、確証はありません(き電区間が変わらないエアセクション直下なら停車しても大丈夫なのかな? ←エアセクション中で停車>ノッチ投入すると微妙な電圧差で短絡し、架線が焼け落ちると言われます)。  いずれにせよ変電所の概念のないBVEでは情景パーツとしてしか意味を成しませんが、それでも右へ左へ流れる架線を見ているとナカナカ楽しいものですね。静止画ではピンと来ませんが、BVE5の次期開発中版が配布されたら新しい動画を作る予定ですので、そちらでお楽しみいただければと思います。  それから、リニューアル当初からgaku氏の製作された複数のオブジェクトをそのまま使わせていただいてきましたが、日々自作オブジェクトへの置き換えが進み、ようやく残すところ片手で数えられるくらいになりました。実は路線データの方も修正漏れを修正するのが面倒だったため一度書き直しており、近いうちに完全自作路線と言える日が来そうです。だからどうだということは無いのですが、データ配布へ向けての最低限の下準備と言うことで・・・。

デッキガーダー橋と架線柱

ファイル 14-1.jpg  鉄道模型や絵画の中で列車を引き立てるアクセントとして重宝するのが鉄橋やトンネルです。童謡『汽車ぽっぽ』の中でも「鉄橋だ♪」「トンネルだ♪」などと歌われているわけですが、風景の境目であったり、音の変化であったり、はたまたその構造物そのもののインパクトであったり、何かとワクワクさせられるアイテムですね。飯田線の飯田以北のトンネルは意外なことに伊那上郷~元善光寺間の一ヵ所しかありませんが、鉄橋については天竜川に注ぎ込む数々の支流を越える必要があるため、随所に架けられています。  ただ残念なのは全てガーダー橋であるため、絵的にはトラス橋ほどのインパクトがありません。これが模型や絵画なら横からの構図で楽しめるのですが、生憎 BVEは運転席の視点が基本ですから、枕木の見た目が少し変わる程度の変化しか感じられません。唯一の楽しみは鋼材が振動して発する轟音ですが、前後に急曲線が多いため30~40km/h程度のノロノロ運転になり、run音の特性上あまり轟音とは言えないノイズ混じりのサウンドになってしまうのが残念です。 ファイル 14-2.jpg  さて、鉄橋のストラクチャでレール部をどの程度作り込むかは以前より悩みの種になっていました。オーソドックスに行くなら枕木部を透過テクスチャでベタッと置いて、レールとガードレール、場合によっては渡り板も別パーツ化といったところでしょうか。しかし、枕木をテクスチャ1枚の平面で表現すると厚みが感じられず、特にノコギリ状に見えるべき右端に違和感を感じてしまいます。  なら枕木を1本1本座標で立体化すればリアルに見えるのかというと、そう単純な話でもなく、枕木表面の突起物(橋桁と枕木を固定するボルトの頭や、犬釘に相当するロール型バネやボルト類)、つまり運転台の視点から見た時に、枕木の前縁から前方へハミ出して見えるオブジェクトを立体的に描くには、一枚板でテクスチャをベタッと貼り付けた方がリアルに見えることもあるのです。 ファイル 14-3.jpg  そこで今回は折衷案、というか足して2で割らない、立体オブジェクトと板オブジェクト両方の要素を併せ持つ構造にしてみました。ワイヤフレーム表示にした画像をご覧いただければ一目瞭然ですが、基本的には枕木を全て立体化し、それぞれにテクスチャを貼り付けています。おかげで枕木両端部の立体感はバッチリ。また、上の画像で枕木左端をご覧いただければ分かりやすいかと思いますが、せっかくバラしたのだから枕木の長さを各々微妙に変えて、よりリアリティのある仕上がりを求めました。左側の手すりや通路の踏み板も例によって例のごとく寸法を微妙に変化させてグニャグニャ感を出していますが、皆様もう飽きられたと思うので詳細は割愛します。 ファイル 14-4.jpg  次は突起物類の処理です。この鉄橋では枕木のズレを防止するアングル材(けい材)が左右に取り付けられていますが、これより内側は板一枚にテクスチャをベタ貼りしたものを重ねて配置しています。文章で説明するのは難しいですが、上方から見おろした右の画像をご覧になれば、その構造をお分かりいただけるかと思います。これにより、ボルト類の突起などを表情豊かに描くことが出来ます。当然このように真上から見おろしてしまうと抜けているところと抜けていないところが出来てしまい違和感がありまくりですが、運転台からの視点に限って言えば、枕木の厚みがあるため下が抜けて見えることはあり得ず、問題にはなりません。  ちなみに、立体化した枕木の上面とテクスチャをベタ貼りした板オブジェクトを同じ高さに設定してしまうと、重複したテクスチャがチラチラと交互に表示されて鬱陶しいので、板オブジェクトの方を1cm浮かせて置いています。ミリ単位の差でもチラツキを押さえることはできますが、少し離れたところから見るとチラツキが再発することがありますので、少し余裕を持たせた方が良いでしょう。 ファイル 14-5.jpg  橋梁部の架線柱については以前の動画内でも座標による立体化に拘って・・・と紹介していましたが、手間をかけた割には実物の無骨なディテールを表現しきれておらず、喉に刺さった魚の小骨のようにずっと引っかかっていました。なので鉄橋のストラクチャ製作に合わせて全面的に再リニューアル。どうせ時間をかけるならと、やれることは全部やって当初想い描いていた理想のディテールを追求しました。  前作の至らなかった点は、全体的に鉄骨が細く貧弱だったのと、テクスチャにメリハリが無くリベットも再現していなかったこと。そのあたりを踏まえ、現地取材で得た詳細な写真から各部のディテールを検討し、完全新規に製作しました。 ファイル 14-6.jpg  例によってこちらもワイヤフレーム表示です。実は今回、リベットなどのディテールが複雑なため透過テクスチャを用いての製作も検討したのですが、解像度をかなり高めに設定してもαチャンネルとアンチエイリアスの兼ね合いで理想の描画品質を得ることが出来ませんでした。というわけで従来通り頂点を打って面を作り、それぞれにテクスチャを貼り付けていきました。小さなテクスチャでも輪郭がシャープに抜けて描画されるので、手間はかかりますがデータ容量と品質を考慮するならコレがベストなのではないかと思います。 ファイル 14-7.jpg  気合いを持続できず何回かに分けて製作しましたが、ようやく鉄橋まわり一式の再リニューアルが完了しました。時間はかかったものの、おかげで今の自分に出来るベストなモノが完成したと思います。  いくら低速とはいえ鉄橋を通過するのはわずか数秒間、しかもリベットなどのディテールが見て取れるのはホンの一瞬ですから自己満足に過ぎないと言われればその通りなのですが、しかしその瞬間が全体の印象に与える影響も馬鹿に出来ないモノではないでしょうか。  余談になってしまいますが、皆様は自分の満足するモノって作れていらっしゃるでしょうか? BVEに限らず仕事でも他の趣味でも何でも構いませんが、胸を張って「良い出来だ」と人に言えるほどのモノはなかなか作ることが出来ません。当然スキルは人それぞれですから世界を相手に言えるような人は希有でしょうが、少なくとも今の自分にできる最高の仕事・・・というのは誰にでも出来るはず・・・なんですが、それでも自己評価100点満点というのはナカナカ難しいモノです。  よくエライ人が「自己満足じゃダメだ」なんて仰ってるのを聞きますが、作った本人すら満足できない程度のモノで他人が満足してくれるわけもなく、自己満足こそが至高だというのが私の持論です。自己満足はダメと言うお方、エライ割には自身の仕事に対する満足レベルを随分低い水準に設定されていらっしゃるのだなぁ・・・なんて、少し悪意を含んだ解釈をしてしまったりもするのですが、兎にも角にも私個人は常に自己満足追求派でありたいと思っています。(まぁ、それではご飯が食べられなくなっちゃうのですが、その話はまた別の機会に・・・) ファイル 14-8.jpg  えらく逸れてしまいましたが、ぐるっと廻って冒頭のお話。長々と書きましたが、つまりは面白味のないガーダー橋もここまでやればそれなりのインパクトを与えることが出来るんじゃないか、と言うことです。せっかく鉄橋があるのにそこでワクワクしないというのは負けた気がしますので何とか打破したかったわけですが、ようやくこれで落ち着けそうです。  サウンド面での改善は難しいところですが、「いかにも轟音がしそう」という視覚イメージは細部を作り込むことによって再現可能と思います。そもそも、ほとんど音のしない鉄道模型や、音とは無縁の絵画であっても、轟音が伝わってくる作品というのは少なくありません。同じようにBVEのストラクチャも精密に作り込むことで重量や振動を視覚的に感じさせ、実際に鳴っているサウンドよりもリアルで重厚な音に脳内補正して感じることが出来るのではないかと考えています。

住宅の建築様式2

 前回に引き続き、今回もまた建物と地域性のお話です。「おいおい、鉄道の話は無いのかよ?」というお声もあろうとは思いますが、まぁそう言わずにお付き合い下さいませ。 ファイル 13-1.jpg  今回新たに追加したのは「本棟造」という様式の大柄な民家です。南信地方独自の建築様式ですので他の地域にお住いの方は見慣れないことと思いますが、信州をイメージさせる建築のため蕎麦屋の大型チェーン店などでこの様式、またはそれを模した造りをご覧になっているかもしれませんね。  おおまかな特徴としては左の画像のように平屋+屋根裏部屋、妻入り(妻側に入り口がある)で勾配の緩やかな切妻屋根、平側と妻側の長さが同じくらいか、むしろ妻側の方が長いなど。専門家や地元の方に言わせれば他にも細かい定義付けが諸説あるようですが、生憎こちらは余所者かつド素人。先に挙げた程度の特徴を持っているモノは亜流や末裔も含めて本棟造りにカテゴライズしてしまいましょう。  前回の記事で建築様式における格式の話をしましたが、この地域では例外的に本棟造りが最上級とされていたようです。中でも立派なものには“雀おどし”と呼ばれる棟飾りが設けられていますが、今回のストラクチャでは汎用性の高い、「ちょっと立派な農家」クラスに仕立てたかったので省略しています。屋根は建築当初は石を載せて押さえた板葺きだったものを、後から新建材で葺き替えたという設定で、それ以外は原型をよく保ったスタイルに仕上げました。 ファイル 13-2.jpg  もう1点、こちらは形状こそ似ているものの年代が下り、格式の点からも本棟造りに分類するのはチト無理があるような外観ですが、本棟造りの流れを汲んだ近代住宅と解釈して良いでしょうか。外壁は安っぽいトタンの腰板で、屋根周りの装飾を一切廃した実用重視の造り。窓配置から察するに、近代住宅とさほど相違ない間取り。屋根の角度が上のモノと比べて少し深いのは、最初から瓦葺きとした屋根重量を逃がすためと、屋根裏部屋の有効スペースを大きく取るためでしょう。元々屋根裏部屋は養蚕(絹糸の原料ね)産業に使用することが多かったのですが、それが衰退した後は部屋として、物置として使われるよう時代とともに変化しています。  ちなみに軒下に収納されている材木は、収穫した稲を干すときに組んで柱にする“ハザ木”。農村部で見かけた方も多いと思いますが、コレがあるということは稲作農家ということになります。 ファイル 13-3.jpg  七久保~伊那本郷間に配置していたストラクチャのうちいくつかを新作に置き換えました。種類が増えたことでより自然に、そして地域独自の建築様式を取り入れたことで、より伊那谷らしい風景に近付けたかな? と思います。  冒頭にもおことわりを書きましたが、運転シミュレータでは添え物にすぎない建物に大きな労力を割いているのは、ひとえにご当地感を演出するため。実際の路線に乗ったことが無い方がプレイされたとしても、「あぁ、いま自分は飯田線を運転しているんだな~」という気分が自然に湧いてくるような、そんな路線データに仕上げるための重要な要素の一つが建築様式なのです。  以前にも単線で列車密度が低い地方路線は風景無しで面白味を出すのが難しいと書きましたが、かといって何でもいいからと適当にあり合わせの風景を付けただけでは、どこの路線をプレイしても同じような感想しか抱けません。九州には九州の、北海道には北海道の、そして信州には信州の景色を付けてこそ、製作時間の増加やデータの重量化というデメリットを抱えてまで風景を付ける価値が出てくるのではないでしょうか。  また実在路線に限らず、BVE界の中で度々その是非が問われる架空路線にしても、そうした地域性の表現などができれば「いかにもありそうな」架空鉄道として、ある程度リアル派にも受け入れられるモノが出来るんじゃないかと思いますが、どうでしょうか?

住宅の建築様式

 これまでの区間に比べると住宅の多い小町屋~駒ヶ根間に風景を付けていると、やはり圧倒的にストラクチャが不足していることを痛感させられます。動画「その4」で紹介した数+そのバリエーション違いだけで自然な街並みを表現するのは不可能ですね。そもそも種類はあっても似通った色合いの物が数点あったり、バリエーション違いと言えば聞こえは良いものの、屋根の色が違うだけとか差し掛け屋根の有無だけとか、実のところ手を抜いて数だけ揃えたようなストラクチャも結構ありましたので、根本的に種類を増やす必要があると判断しました。 ファイル 12-1.jpg  切妻、入母屋造りのストラクチャはこれまでいくつか作ってきましたが、寄棟造りのモノは一棟もありませんでしたので新規に製作しました。この寄棟造りの住宅、実際に伊那谷へ行ってみると結構な比率で建っているのですが、これまでストラクチャを作っていなかったのは、産れも育ちも関西の私には普段から目にすることの少ない、馴染みの薄い様式だったからです。 ファイル 12-2.jpg  和建築の様式としては入母屋>切妻>寄棟の順で格式が高いとされていますが、機能的な違いとして、破風を持たない寄棟は通気性に劣るため、湿気の多い関西には適さないのかもしれません。逆に寒暖の差が激しい伊那谷には適していると言え、格式云々よりも適材適所といったところでしょうか。まぁ、関西は京都や奈良といった古都があるため格式を重んじるというか、見栄を張っている側面もあるとは思いますが? 真相はどうでしょう。  伊那谷は大田切を境に関東文化圏と関西文化圏に分かれるなんて言われますが、そう明白な境界線があるわけでは無いので周辺の建築様式にしても東西チャンポン、関西とほぼ同じ様式の入母屋、切妻の建物も多く、見られないのは虫籠窓や紅殻格子を持った町屋造りくらいでしょうか。というわけで、切妻の民家も新規に二種類製作しました。 ファイル 12-3.jpg 以前より使っていた切妻民家のストラクチャとは少しスタイルを変え、一階、二階の妻壁を面イチにして、間に差し掛け屋根を挟まない形態にしましたが、むしろこちらの方が一般的かもしれません。  純木造のイメージで作った過去作との差別化を図るため、外装にモルタルやトタンを使った、少し年代の下るモノに仕立ててみました。テクスチャのクオリティも過去作が新作ストラクチャに比べて陳腐化してきましたので、より写実的にしています。これまで使い回してばかりだった瓦のテクスチャも今回より一新し、全体的な質感の向上に概ね満足しています。 ファイル 12-4.jpg  既にお気付きのこととは思いますが、寄棟二点、切妻二点、それぞれcsvファイルの基本構造は同一で、テクスチャと小物類の配置、一部の寸法を変えて違いを出しているだけです。さすがに隣に並べて配置すればバレバレでしょうが、間に他の建物を挟むだけで同一形状とは分からなくなるくらい異なるイメージに仕上がっています。同じ形の建物が山ほどあるのは考えものですが、棟瓦や鬼瓦といった屋根周りの立体化に手間のかかる日本家屋は、ある程度csvデータの使い回しをしないと勿体ないですね。時には手抜きも必要です。  あとはもう少し複雑な形状の入母屋の民家数点と、90年代半ばとなれば輸入建材の近代住宅も建ち始めていますから、そういったモノもいくつか用意したいところですね。 ■リレーボックスの作り分け ファイル 12-5.jpg  話は変わりまして、踏切や信号機の近くに配置されているリレーボックス、いわゆる器具箱を数種類に作り分けました。これまでは「それっぽいもの」を汎用として配置していましたが、周辺ストラクチャの作り込みレベルやテクスチャ解像度が上がってくると、相対して違和感を感じるようになってきたので、キチンと作り分ける必要が出てきたのです。  飯田線に使用されているボックスはほとんどが遮熱板の付いたタイプですが、これは直射日光による庫内の温度上昇を避けるためと、積雪時の結露防止でしょうか。この構造は見る度に戦艦大和の副砲塔を連想してしまいます。それはそうと、この二重構造を実際に再現するか迷いましたが、結局タダの箱組みに隙間を黒く表現したテクスチャで簡単に仕上げました。あと2~3点、形状の違う物が必要なのですが、そのあたりは追々・・・。  リレーボックスにしろ先ほどの住宅にしろ、3DCGに限った話ではありませんが、こういった現実をベースにした創作物におけるリアリティは、全体のバランスがとても重要。一カ所だけを突出してリアルに再現すると逆に他の部分が安っぽく見えてしまい、結果的に全体の見栄えを低下させてしまうのです。また、リアルにすればするほど誤魔化しが効かなくなり、どこまでも細分化、作り込みをしなくてはならないスパイラルに陥ります。  例えば、ストラクチャが簡単な箱状のオブジェクトに解像度の低いテクスチャを貼り付けた「建物のようなモノ」であれば、住宅にも倉庫にも工場にも使うことが出来るわけですが、その箱ストラクチャに「明らかに住宅に見える」鮮明なテクスチャを貼ることで、それは住宅にしか使えなくなってしまい、更にその住宅が木造であると判別できるなら、木造の住宅としてしか使えなくなります。ということは、住宅、商店、工場といった建物の種類の違い、そしてそれぞれに木造、土壁、モルタル、コンクリートなど建材の違い、更にそれぞれ色や建てられた年代の違いなど、各々数パターンを用意するとなれば、必要なストラクチャの数はネズミ算式に増えてしまうわけですね。  現実的に考えて沿線風景の全てをそのままリアルに作るのは不可能ですが、少なくとも「嘘を嘘と感じさせない」程度のリアリティを持たせるなら、画面一瞬の中に同じ建物が二つと無いくらい豊富な種類のストラクチャを用意する、それくらいの勢いで製作に挑む必要がありそうです。 ■駒ヶ根駅周辺 ファイル 12-6.jpg  最後に駒ヶ根の進捗状況をご報告。前回の画像と比較すれば、旧伊那電支社ビルやアンテナ鉄塔から位置関係がお分かりいただけると思いますが、駒ヶ根駅へのアプローチがそれらしくなってきました。これまでほとんど見られなかったビル建築がチラホラと出現して、一気に賑やかな感じになりました。  ストラクチャは専用品と汎用品が五分五分といったところで、駅に近付くほど専用品の割合が増えています。先述の踏切器具箱も早速配置してみましたが、やはり専用品を作ると説得力が増しますね。ちなみに右手のカマボコ屋根の建物は建て替えられて現存せず、今はJAの「虹のホール」という立派な施設になっています。地方の農協は強いなぁ・・・。  細々ながらも日々ストラクチャを増産したおかげで遠目にはなんとか市街地らしくなってきましたが、それでも汎用品を用いた前方左側の商店街が実際のイメージと違いすぎていることや、駅前ロータリーの再現は未着手であるなど、完成と言えるまでには程遠い状態です。今月末には詳細な画像をお見せできるくらいになっていれば・・・と思っていますが、テクスチャの材料が根本的に不足しているところもあるので微妙ですね。作り込めば作り込むほど伊那谷へ再取材に行きたくなりますが、万年金欠病の私としては18きっぷシーズンを待たざるを得ないのが悲しいところです。

まだまだ駒ヶ根駅

ファイル 11-1.jpg  忙しい日や疲れている日は製作がはかどらないものですが、たとえ倉庫1棟だけでもいいから毎日少しずつデータを作るようにしています。そうこうしているうちに、週末分と合わせるとソレナリに進展があるもので、駅構内に関してはかなり「駒ヶ根らしさ」が出てきたと思います。曖昧な表現ですが「らしさ」というのは重要な要素で、当時を知るファンの方や実家が周辺にある方などに懐かしさを感じていただけるようなモノに仕上げられたら、と思っています。  レンガとコンクリートのビルは伊那電時代の旧赤穂支社ビルで、本社は東京にありましたが実質の本社機能はこちらにあったようです。ビルはJR移行後も残っていましたが、残念ながら98年に解体されてしまいました。  明治の鉄道施設には東京駅に代表されるような欧州色の濃い建築物が多かったわけですが、大正時代に入ると米国寄りのモダニズム建築が流行したようですね。シカゴ派といいますか、均整の取れたスタイルに装飾を極力省いた質実剛健な造り、しかしレンガをアクセントに使ってさりげない色気を出しています。華麗ではないけど無味乾燥とした量産品でもない、個人的には非常に好ましいスタイルの建築物と思っています。欧風から米風へ、第一次世界大戦後の世界における勢力図の変化が、こんなところからも読み取れそうですね。  ビル背後のアンテナ鉄塔は高圧鉄塔を簡単に改造しただけの仮のモノ。鉄骨の組み方が違うのを作り直すかどうか、あとパラボラアンテナ直下の作業台に手すりや支持サポートを取り付けてゴチャゴチャ感を出したいと考えています。 ファイル 11-2.jpg  先日から両開き分岐器、いわゆるYポイントを作らないと上りホームの形状や電留線の正確な再現ができないと書いてきましたが、文章だけではイメージしにくいと思われるので画像を交えて考察していきます。  現在の構内配線は既に完成している8番片開き分岐器を使用しての仮配置で、画像中に赤線で示したのが本来あるべき配線です。手前から2番目のポイントを両開きにすることで、限られた敷地にできるだけ長い有効長のホームや電留線を確保しているのがよく分かります。同時に分岐角やホーム幅確保の関係で、結果的に3番線ホーム(119系のいるところ)が湾曲するというのもお分かりいただけると思います。また旧支社ビル前の安全側線ですが、アレはかつて豊橋方に存在した貨物側線の成れの果てですから、延長部が本線右手の空き地に接続しないと辻褄が合いません(点線部)。  分岐器ひとつ変えるだけでホーム形状、電留線有効長、安全側線の位置関係すべてに納得ができ、周囲の風景との位置関係も自然なものになるでしょう。しかし逆に言えば、ちょっとした配線のミスが全体の正確性を損なう可能性もあるわけで、限られた資料で路線データを製作することの怖さでもありますね。  ・・・と、これだけ書いておきながら、分岐器のストラクチャにはまだ手を付けていません。しばらく気合い充電中なのです。 ファイル 11-3.jpg  先日の更新ではホーム側の壁面1枚しかできていなかった駅舎も、手前部分を作り込んで完成に近付きました。豊橋方は壁や屋根が複雑に入り組んでいて、作っていて楽しくも大変なところです。ホーム長・位置を算出する時に、計算上は周辺にあるはずの165.8キロポストを基準にしようと取材時の写真素材を探したのですが標識を見付けられず、4両有効長+αをだいたいの勘で割り出して寸法を決めることになってしまいました。原則としてキロポストは下り方向の左手、一部の複線区間では上下線の中間部に植えられていますので見失うことはあまり無いのですが、後日写真を整理しているとこんなところに! そりゃないよ。  不幸中の幸いだったのが、路線データの165.8キロ位置と、キロポストがあるべき風景の位置のズレがわずか3mだったこと。読みが大きく外れてはいなかったわけで、「考証派」というよりは「雰囲気派」の私にしては上出来ではないかと安心しました。もちろん構内踏切・トイレ周辺の寸法を修正して、 165.8キロぴったりの位置に植えました。 ファイル 11-5.jpg  ホーム手前は色んな建物が並んでいて地味に時間のかかるところです。一部の建物は既に解体されてありませんし、手前のプレハブ倉庫が建っている場所は現在駐車場になっていますが、旧支社ビルの取り壊しと同時期に工事したのではないかと判断し、保線資材などが野積みされている時代を再現しました。  右手奥に見えるスレート造りの倉庫はかなり古そうでしたので当時からあった物と思いますが、さらにその奥の保線詰所(ほとんど見えませんが)はいつ建設されたのか自信がありません。これに限らず当時の写真に写っていない建物類は建築様式と汚れ具合などで95年前後に存在したか否かを判断していますが、微妙なラインにあるものは判断に苦しみます。また外装がリフォームされていると判断できず、取材時にも写真を撮り逃した物が結構あります。駅前のビル群もそういった判断ミスから撮り逃した物がいくつかあり、夏の青春18きっぷシーズンになったら駒ヶ根を再訪しようと思います。 ファイル 11-6.jpg  BVE4ではストラクチャが600m先で画面上に現れるとき、データが重すぎると一瞬カクッとフレームが落ちることがありましたので、できるだけオブジェクトを小分けにして位置をずらして配置するなど工夫が必要でしたが、BVE5では重量級データでも特に問題なく描画してくれます。  プログラム構造の違いなのか、単純にGPU依存になって処理能力に余裕が出来たのかは分かりませんが、駅周辺の専用ストラクチャについてはひとまとめにして1つのファイルに纏めてしまうことも可能になったわけです。  画像は駒ヶ根駅構内のメインストラクチャで、これ全部で1つのストラクチャデータです。これ以外に旧支社ビルと前回解説しました上りホームの上屋を並べれば旅客駅部分の完成となります。一部バラストまで一体化していますが、これはcrack構文を使うと横に伸びすぎてテクスチャがおかしくなる、間隔の広い部分です。 ファイル 11-7.jpg  1つに纏めるメリットとしては、路線データ上での配置が簡単・シンプルというのもありますが、テクスチャの重複読み込みを少しでも減らそう、というのが主目的です。例えば、下りホームと上りホームの石積みに同じテクスチャを使用していると仮定して、上下ホームを別々のファイルで造れば最低2回は同じテクスチャを読み込むことになりますが、1つのファイル、かつ1つのCreateMeshBuilderで上下ホームを造れば、テクスチャの読み込みは1回で済むことになります。  通常のデータならここまですることも無いとは思いますが、専用ストラクチャをふんだんに使った長大路線、しかもできるだけ高解像度のテクスチャを使って・・・という路線を作る場合、好き放題に作っていたのではいつか実行時のメモリ使用量が限界に達して起動しなくなってしまいます。旧作ストラクチャの効率化改良も並行して進めており、以前は1.8GB以上だったメモリ使用量を1.3GB程度にまでダイエットさせました。BVE5ネイティブで製作できるようになればカーブレール、カーブ築堤類が不要になるので1GBを切るのは確実と思われますが、逆に新規部分を1駅延伸させる毎に必要なメモリ量は着実に増えていきますから、将来延伸させるつもりがある路線データなら神経質なまでの節約をしておくべきでしょう。 ※必要なメモリ使用量が2GBだったとして、物理メモリを2GB以上積んだパソコンでないと動かない、というわけではありません(実際にはOSや常駐ソフトが既に多くのメモリを消費しているのですが、話が複雑になるのでここでは割愛)。物理メモリに収まりきらないデータについてはOSが自動的にスワップファイルなるモノをハードディスク上に作成し、それを「仮想メモリ」として使用しています。ただし、シリコン製のメモリに比べるとハードディスクの読み書き速度は非常に遅いため、いくらでも増やして良いというものでもありません。品質に影響が無い範囲で、削れるものは可能な限り削っておくべきでしょう。

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