天井周りのディテール強化
- 2017/05/03 16:00
- カテゴリー:運転台
2016年後半から今年にかけて、運転台の天井をディテールアップしました。twitterに随時投稿していたもののマトメですが、記録として記事化しておきます。
■直通予備引きスイッチ
基本は単純な箱ですから2tのプラ板を5mmプラ角棒で裏打ちして箱組しています。上部のヒンジは見えないので省略、ツマミは鍋フタや引き出しのツマミに用いる汎用品を塗装して装着しました。プラ板の厚みは過去1mm厚を多用していましたが、接着剤や塗料の溶剤に負けて反り・歪みが発生することがあるので現在は2mm厚を使用しています。特に仕上げが艶ありだと僅かな反りも光線が歪んで目立つので、コストアップにはなりますが剛性を確保するようにしています。
各種銘板の原稿はPCで作ります。新型の電車に装備されている機器類の銘板は実物もPC上で所定のフォントを使用して作成されているためコピーするのが楽ですが、昔のものは工程が違うため描き起こすしかありません。
近似のPCフォントで代用すると縦長・横長に変形させた文字(長体・平体という)を使用する時に違和感が大きくなります。旧来の製法では文字が縦長であろうが横長であろうが縦横の線幅は均一ですが(上)、PCフォントを変形させたものはその倍率によって線幅が変わってしまいます(下)。
写真を元に文字の中心線をトレースして線画を描き起こすことで変形させても太さが変わらない文字原稿を作成しています。面倒ではありますがいずれにしてもPCフォントには無い特徴的な書体ですから、目立つ部分だけでも描き起こすと雰囲気はグッと良くなります。
国鉄標準の灰緑色で塗装しますが市販の塗料で近似する製品がありませんので調色します。各種数値や実物塗料を元に調色するやり方もありますが、実車部品も塗料の個体差や褪色具合によって微妙な違いがあるため感覚で作っています。黒1:白1:緑2を基本とし、あとは合わせたい部品の色、または自分の理想の色になるまで塗料を加減して調整します。
塗装は艶ありで仕上げますが、綺麗な艶を出すには塗料が垂れる寸前までコッテリ吹き付けるのがコツです。しかしそれだと調色した貴重な塗料を大量に消費しますので、色ムラの無い程度にサッと塗装し、後からクリアをコッテリ吹き付けるという手法で艶を出しています。
銀色のツマミは適当な廃部品からもぎ取ったもの。最後に印刷した銘板(詳細後述)を両面テープで貼り付け、丸頭の釘を四隅に打って完成です。
■NFB盤
運転室右上にズラッと並んだNFB(ブレーカー)群、メカメカしさの演出に効果の大きい部品ですが、形式指定で手に入れるのはなかなか難しいものです。それ以前に拙作の運転台は高運転台の足元から30cmほどを省略して全体を低く作っていますので、出入口の高さ確保のためNFB盤も短縮する必要があります。写真資料から寸法を読みつつアレンジを施して自作していきます。
傾斜面があるため補強に三角プラ棒を併用していること以外は引きスイッチ箱と同様、2mmプラ板と角棒の組み合わせで製作。ブレーカー本体は複製品のダミーで軽量化する案もありましたが、将来的にモニタや音響、照明機器のスイッチとして活用したいので実車用のモノを集めました。
銘板は数が多いため原則として類似する機械彫刻用標準書体を使用し、先述の長体・平体やフォントに無い文字(これが結構ある)は写真からトレースして描き起こしました。これをレーザープリンターで銀色のラベルシールに印刷し、薄手のプラ板に貼り付け切り出せば完成です。表面保護として艶ありのトップコートを吹き付けましたがこれは艶が均一になり失敗でした。銀色のラベル地と艶消しトナーの文字でツヤ感が違うほうが立体的であったと思います。
■信号炎管
ほぼ緑色一色の運転室にあって一際アクセントになるのは金色の信号炎管。正確にはその収納容器ですが、保安装置に連動してエア駆動で着火させる構造になっています。実物部品はあまり流通せず、あったところでかなりの重量物ですからアクリルパイプで軽量なレプリカを自作します。
写真と資料から寸法を割り出してPCで作図、アクリルパイプを綺麗にカットするのは結構な手間なので最初から寸法を指定してカット済みの材料を購入しました。あとはプラ板、プラ棒、パテをアレコレしてそれらしく造形、丸いモノなのでどの角度から見ても破綻しないように気をつけながら作業します。ベース部の実物は半円状に割ったものを2つ合わせてネジ止めしていますが、素材的に強度確保を考慮して一体とし、割れ目の部分だけそれらしく造形して再現しました。
ローレットの入ったリングはNC彫刻機でスジ彫したプラ板を貼り付けました。市販の模様入りプラ板でも構いませんがサイズが小さい&値段が結構高い…ということで自作。 ハンドルは実物を観察したところ雑い鋳物を平面だけグラインダーで整えて製造しているように見えましたので、溶きパテを点描のように盛って凹凸を表現、赤い塗料をコッテリ吹き付けるとナカナカそれらしい鋳物感になりました。
ステンレスの筒部は糊付きのステンレス泊を巻き、真鍮(砲金?)の部分はメッキ調スプレーを吹き付けました。塗膜の強度が低い…というか表面を粉っぽくすることで金属的な輝きを模している塗料なので剥げやすいのが難点ですが、手で触る部分では無いので良しとしましょう。
基部のブラケットに経年の汚れを塗装で施し、玉とヒモ、これまでと同様の手法で作成した銘板を貼り付けて一応の完成です。本来は胴からエアの配管が伸びているので運転室全体の進捗に合わせて追加工事を行います。他にも検査済サインの入った封印テープなどペタペタ雑く貼ってやると一層雰囲気が出そうですね。
■天井蛍光灯
これまでずっと四角い穴に蛍光灯スタンドを突っ込んだだけで些かみっともなかったのですが、ようやく蛍光灯ユニットも製作。こちらはプラ板だけでは歪みに対する強度が足りないので、MDFで作った箱にプラ板を貼り付けて化粧する流れとしました。そんなに難しい形状ではありませんが、凹みのR部をパテ盛り整形しなくてはいけない箇所が多く手がかかります。
蛍光灯ソケットは実車と同じデザインの物が手に入らなかったので比較的形状の似ている物をチョイス、蛍光灯本体は安物のLEDランプを使用しましたが、いずれ調光回路を組み込みBVEの”CabIlluminance”と連動して環境光を明暗させる目論見です。
■ベンチレーター
天井に設けられた換気口を再現しますが、ユルくカーブした羽根の再現が難易度高め。プラ板を力や熱で曲げてみるものの、なかなか均一には曲がってくれません。というわけで元から曲がったモノを探すしか…と選んだのは大径の雨樋。これを短冊状に切って角を丸め、プライマー処理、サフ吹きを経てアルミ色に塗装しました。
アルミ製と思われる枠をプラ板・プラ棒で作り、羽根はプラ丸棒を接着して穴に通しました。実物では開閉を調整するツマミが前方に付きますが、クロムメッキ風の仕上げをどう処理するか悩んで手を付けていません。余力があればいずれ追加工作します。
その他細かな工作・修正を施し、諸々の機材を装着して天井周りは実車に近いゴチャゴチャ感となりました。BVEで運転しているぶんにはほとんど目をやることのない範囲ですが、込み入った機械に囲まれて運転しているというだけで臨場感はアップします。
長くかかりましたが天井はこれで一段落とし、次は乗務員室ドア周りのモールや蝶番の再現、車掌弁など左壁面のディテール工作に移ります。