架線の偏位とエアセクション
架線のストラクチャについてはリニューアル当初から一貫してBVEとしては標準的なモノを使い続けてきましたが、そろそろ周囲とのバランスで誤魔化しがきかなくなってきたので少し精密な物に置き換えました。今回は細かい部分の話題が多いため、一部を除きスクリーンショットはBVE5(試験版)のフルスクリーンで撮っています。低速回線の方は画像の読み込みに時間がかかるかもしれませんがご容赦下さいませ。 直線区間ではほとんど分かりませんが、吊架線をカテナリー曲線風にしてみました。本当のカテナリー曲線(紐の両端を手に持って自然に垂らした時に出来る曲線)は計算が非常に難しいので適当に数値を弄って曲線化していますが、直線のままよりは見栄えのする物になったと思います。しかし、これで25mと 50mの前半・後半と、3種類のオブジェクトを25mおきに手動で配置しなくてはならなくなり、延伸の度に必要な工程数はかなり増えてしまいました。 また、ハンガー(吊架線からトロリ線を釣っている部品)も針金をクネクネ曲げたような簡単な造りですが、運転台から見て精密に見える程度に再現しました。テクスチャは貼らず、面の色を2色使って光の当たるところ・当たらないところを造り分けています。 BVEユーザーの方なら直線区間の架線がジグザグに張られているのはご存じと思いますが、BVEでコレを再現するのは結構面倒。しかし先のカテナリー曲線の再現のため、いずれにせよ25mごとに架線を設置する必要があり、ならばついでに・・・と、ジグザグ偏位も再現することにしました。 左右の許容値は会社・路線によって違うようですが、あまり小さくては面白味がありませんので一般的に最大とされる±20cmに設定しました。架線を配置する数値としては、左寄りの-0.2m位置からスタートしたとして+0.46度振ってやると、25m前方で自線の中央である0.0m位置に移動します。次に0.0m位置からまた+0.46度振ってやるとその次の25m前方、始点から50mで+0.2m位置、つまり右寄りに移動します。今度は0.2m位置から逆に-0.46度振り、次の0.0m位置から-0.46度振ると、始点から100m位置で再び-0.2m位置、つまり左側に戻ってきます。曲線の前後や架線柱間隔の変わる場所で辻褄を合わすのに苦労することはあるものの、基本はこの繰り返しですので特に難しくはありません。ただ、25m毎に作業が必要ですので非常に面倒というだけです。 ちなみに今回はfreeobj構文で架線オブジェクトを配置をしています。rail構文でも構いませんが、連続する曲線部を除けばどちらにしても25m 毎の作業が必要であることと、制作に使用してるBVE4環境では使用可能なrailインデックスが15しかないため、そのうちの1つを占有してしまうのが嫌ということでfreeobj構文を使うことにしたのです。 ジグザグ偏位を再現すると架線柱の振れ止め/曲線引き装置や懸垂碍子の位置も左右に振り分けなくてはならなくなり、その修正作業に合わせて架線柱も一斉に改良しました。画像は省きますが、ポールの円柱化(コンクリート製の物に関しては頭部を丸めた)、ポールのテクスチャを数種類に分ける、ビームのテクスチャを陰影のあるものに変更、ポールにビームの影を付ける・・・などなど。 で、その勢いのまま架線の張力調整装置も造りました。大層な名前ですが、要はオモリの数で架線を引く力を調整するだけの機械です。私のまわりではコレを「ターンバックル」と呼んで通じるのですが、最近は言わないのかな・・・と動画のコメントを見て思ったり。ちなみに線材の弛みを取る装置を総称してターンバックルと呼びます。 滑車の再現は面倒なので透過テクスチャで何とかしようと思っていたのですが、実際に作って配置してみると、運転席からはほぼ断面方向から見ることになるため、ペラペラの板オブジェクトではおかしなことになってしまいました。中が抜けているためcylinder構文も使えず、仕方なく座標を打ってモデリング。テクスチャは陰影を表現するだけの簡単なモノを貼り付けてヤッツケました。 そうそう、動画のコメントで「cylinder構文にもテクスチャ貼れるよ」と教えていただいたので、コンクリート製のウェイトはその手法を試してみました。どの座標順に貼り付けられていくかの定義が分かってしまえばナルホドこれは楽チンですね。形状の複雑ではない円柱状のパーツは今後この方式で行くかもしれません。他のパーツは適当に座標組みし、細かな物ですからテクスチャも貼らずに色指定だけして完成です。 架線柱は専用の物を用意せず、従来の物に合体させて使うことにしました。画像は飯島駅を出て上下線が合流した部分の架線の末端ですが、ゴチャゴチャ感が出て良い感じです。テクスチャを貼らずに手抜きしたところも、これくらいのサイズ、かつ一瞬で画面外へ移動していくオブジェクトなのでそれほど気にならないと思います。 先日「リアル化スパイラル」のお話をしましたが、今がまさにその状態で、架線まわりをリアルにしてしまうと張力調整装置を配置するにも理にかなった配置をしないと不自然になってしまい、ポンと置いて完了!では済まされそうにありません。 今まで架線の細部なんて気にも留めなかったのですが、架線の起点・終点の構造を撮り溜めた写真から推察し、2本の架線が並走するエアセクションを再現ました。画像は飯島~田切間のエアセクションですが、新しい架線が右側からスタートして寄り添い、1スパン分並走して従来の架線は左に逸れて張力調整装置に繋がります。物理的に接続されず空気を絶縁体としているから「エア」セクションなのですね。架線柱のビームに取り付けられた紅白の標識は「電車線区分標」。またエアセクションの架線はハンガーにオレンジ色の保護カバーが装着され、他と区別されています。 しかし飯田線のエアセクションを見ていると、この電車線区分標とオレンジ保護カバーのセットが装着されている所と無いところがあるのです。データ上でもこの違いを再現していますが、違いの意味がよく分かりません。き電区間の変わる(担当変電所が変わる)所のみ標識と保護カバーを付けているのではないか?と勝手に想像しているのですが、確証はありません(き電区間が変わらないエアセクション直下なら停車しても大丈夫なのかな? ←エアセクション中で停車>ノッチ投入すると微妙な電圧差で短絡し、架線が焼け落ちると言われます)。 いずれにせよ変電所の概念のないBVEでは情景パーツとしてしか意味を成しませんが、それでも右へ左へ流れる架線を見ているとナカナカ楽しいものですね。静止画ではピンと来ませんが、BVE5の次期開発中版が配布されたら新しい動画を作る予定ですので、そちらでお楽しみいただければと思います。 それから、リニューアル当初からgaku氏の製作された複数のオブジェクトをそのまま使わせていただいてきましたが、日々自作オブジェクトへの置き換えが進み、ようやく残すところ片手で数えられるくらいになりました。実は路線データの方も修正漏れを修正するのが面倒だったため一度書き直しており、近いうちに完全自作路線と言える日が来そうです。だからどうだということは無いのですが、データ配布へ向けての最低限の下準備と言うことで・・・。