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伊那市出張運転会(前編)

ファイル 89-1.jpg  ものすごく今更といいますか報告が遅くなりましたが、3/30~31に「伊那市創造館」にて開催しました出張運転会は無事終了しました。年単位でコツコツ作ってきた路線をその沿線でお披露目できるとは光栄の極み。ご来場いただきました皆様、伊那市創造館をはじめスタッフの皆様、この度は本当にありがとうございました。  告知でも書きましたように、今回のイベントは伊那市駅開業100周年を記念しての企画展「飯田線マニアックス」の出し物のひとつとして開催されました。確か去年の年末あたりに「こんな企画展をやるので何か協力を~」といったお話はいただいていたのですが、まさか運転台ごと出張という話になるとは思ってもおらず、後日"伊那市の本気"にビックリしたものです。  もっとも正式な打診が1月末だったため大慌て。路線データは旧いストラクチャの置き換えを前提に色々取り払って全区間が歯抜けだらけの状態でしたし、運転台も去年の教訓から各部改良すべくバラバラの状態。なんとか2ヶ月後の会期に間に合わせるべく使える時間を総動員して準備にあたりました。 ファイル 89-2.jpg  予期せぬトラブルも何度かあり、運転台を伊那市へ輸送する前日にモニタケーブルを買いに走るというギリギリっぷりでしたが、なんとか間に合わせて、最終的な設営と調整は運転会前日に現地で行いました。  伊那市駅を降りると商店街のあちこちに「飯田線マニアックス」のポスターが掲げられ、街を挙げてのお祭りムードにただならぬプレッシャーを感じました。というのも今回は私が主催ではありませんし(=他の誰かが責任を取る立場にある)、既に多くの方が関わって動いていらっしゃいます。生々しい話をすると結構なお金も動いていることでしょう。これまでの内輪の運転会とはまるで話が違うわけで、今更「間に合わなかった」「動かなかった」では済まされません。万一があっては関係者やご来場の皆様にご迷惑をおかけするのは勿論、BVEそのもの、ひいてはmackoyさんの評判にも影を落としかねないわけで、コトの重大さに若干腰が退けつつも何とか気合いを入れて創造館へ向かいました。 ■まずは「飯田線マニアックス」 ファイル 89-3.jpg  企画展の会期は2/8~3/31でしたので、運転会はそのトリのイベントということになります。日を追うごとに展示物が増えていったという展示は既にクライマックスですので、設営前と運転会の終了後に駆け足で拝見させていただきました。  まず創造館のエントランスでは伊那電気鉄道1号電車の2/3スケール前半部レプリカがお出迎え。なんとコレ、材木の骨に段ボールで化粧をしたもの! 屋根のルーバーなんて泣かせるディテールじゃないですか。足回りは山車になっていて、去年のお祭りで曳いて歩いたそうです。街の有志による製作だったと思いますが、ナカナカ堂々とした作品です。 ファイル 85-4.jpg  企画展の入場券は硬券になっており、ボランティアスタッフの居る週末には入鋏や日付入れの体験も行われました。私も日付入れは初体験で、年季の入ったダッチングマシン(日付印字機)の内部を興味深く見せていただきました。  私が子供の頃にはスーパーマーケットの玩具コーナーに必ずといってよいほどオモチャの"硬券・改札鋏・笛"のセットがありました。いわゆる「こども銀行券」のノリですね。母親にねだった挙げ句買って貰えなかったような気がしますが(笑)私らの世代には憧れのアイテムでした。今のお子様たちはどうでしょう? 硬券はもちろん、改札鋏すら知らない世代では憧れや懐かしさなんてカケラも無いと思いますが、それでもこういった道具には自然とワクワクするものでしょうか。   ファイル 89-5.jpg  これは是非とも見たかった展示物。モハ80系の風洞実験用木製モデルです。登場時は湘南型の名の通り東海道本線で活躍しましたが、晩年は飯田線を終の棲家とした縁の深い車両です。  ちょっと不思議なのは窓枠や方向幕といった細かいディテールまで彫られているのにヘッドライトが無いんですよね。そのあたりを検証する意味もあったのでしょうか? また設計段階から全面窓がHゴムで保持する前提のデザインになっていたのが意外でした。3枚窓からの過渡期である2次車の最初期は木製窓枠でしたから、後に設計変更したものとばかり思っていました。どの時期に何の目的で製作されたモノなのか、詳細が気になるところです。 (補足:解説文は所蔵元で一緒に展示されている0系新幹線のものじゃないかなーと文面から想像。もしかしたら新幹線車両の設計用として80系登場以降の年代に製作された可能性もあり?) ファイル 89-6.jpg  こうした展示の定番といえばやはり鉄道模型のジオラマ。伊那市~伊那北駅を模したレイアウトを飯田線に縁のある車両の数々が入れ替わり走っており、ゲタ電が来たと思ったら313系が現れるパラレルワールドは模型ならではです。  伊那市・伊那北の両駅は線形もそのままに再現されており、特に伊那北の面倒くさい配線はBVEデータの製作でも手のかかった部分ですので、まんまの仕上がりにニヤニヤしてしまいます。  さすがに風景は実物通りとはいきませんが、これには「街の人に自分の家や好きな建物を作ってもらって持ち込んでもらおう」という伏線があったのです。ただ興味はあっても技術的ハードルが高く数を集めるのは難しかったようで、市販キットなどを織り交ぜて間を持たせています。  準備期間に余裕があれば市内小中学校の図工・美術などの授業に組み込んでもらうとかどうだろう?なんて思いましたが(創造館は教育委員会の施設です)、それも年度末とあっては難しい話。いずれにせよ参加型コンテンツを十分なボリュームを持たせて成功させるのはなかなか難しいものです。年齢相応の技術・仕上がりで構わないので、子どもたちの作った建物で埋め尽くされたジオラマも見てみたかったですね。 ファイル 89-7.jpg  模型を取り囲むようにぐるりと配置されたガラスケースやパネルには、やはり飯田線に関わるモノばかりが集められています。割とスペースに余裕を持たせており、佐久間レールパークの密度感を期待された方は肩透かしを食らうかもしれませんが、聞くところによると他にも表に出さなかった展示品がバックヤードに沢山あるとのこと。そうした中で飯田線に縁の深いモノに限定して見やすく綺麗にレイアウトされているのは、それはそれで展示のあり方のひとつではないでしょうか。 ファイル 89-8.jpg  今密かなブームとなっている「秘境駅」に関するパネル展示もありました。過去の貴重な資料も重要ですが、こちらは飯田線の「今」の姿をそのまま伝えており、興味を持てば誰でも行くことが出来る→飯田線の利用に直結するので同じくらい重要な展示です。ちゃんと足を使って取材して一次ソースを提供する姿勢は素晴らしいですね。  「飯田線秘境号」なんて臨時列車も走っていますが、観光客でごった返した秘境駅ってのも変な話ですので、時間に余裕のある方は是非普通列車で普段の閑散とした秘境駅を訪れてみてください。(おっと、それはでは急行券が売れないじゃないか!) ファイル 89-9.jpg  会場の写真は最終日の撤収前に文字通り駆け足で撮影したものですが、既に撤去の始まっているコーナーや人だかりの出来ている部分は撮れませんでしたので、これが展示の全てではありません。「こんなの何処から持ってきたの!?」と思うような貴重な資料も数多くあり、もっとゆっくりじっくり見学したかったのですが、運転会に張り付きっぱなしだったのが悔やまれるところ。こんな雑いレポートになってしまって、せっかく時間をかけて準備運営してこられたスタッフの皆様にも申し訳が立ちません。 ファイル 89-10.jpg  最後、屋外には「飯田線人間スゴロク」なるものが登場! サイコロを振りながら自分がマス目を歩いて進めていくこのスゴロクですが、マス目のひとつひとつが飯田線の駅になっており、豊橋~辰野の全駅に中央線の岡谷までを加え、実に96駅を網羅している特大サイズなのです。  当然それぞれのマス・・・というか駅には「1回休み」とか「3マス戻る」などと書かれているわけですが、その理由付けには各駅に沿ったネタが挿入されており、あの下山村から伊那上郷を先回りする「下山ダッシュ」まで再現されています。これを遊ぶだけで飯田線についてぐっと詳しくなれそうですね。ちなみに辰野駅でぴったりゴール出来なかったら岡谷まで行って戻ってこないといけない鬼畜ルール。  これも遊ぶ時間は無いにしても、せめて全駅見て歩きたかったなぁ~。なんせ運転会が終わる時間だと既に暗いし寒いしお腹空いたで、伊那谷の春は1日が少し短いのです。          ※         ※         ※  そんなこんなで企画展本体の「飯田線マニアックス」、ざっくり駆け足の紹介になってしまいましたが、色々知らなかったことや初めて見る資料もあり楽しめる内容でした。  客観的かつ公平に見た場合、そもそものハコの大きさやゆとりを持たせた展示方法から物足りなさを感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、物は考えよう。例えば大手鉄道会社の博物館とは比較の対象にもならないわけですが(良し悪しの話ではなく規模と立ち位置の違いによる、念のため)、そういった大型の施設を訪問したときは余りの広大さに限られた時間で全てを見て回るのは不可能であり、ついつい自分の興味のある分野ばかりを見学してしまいがちです。それはそれで楽しいですし、BVE作者のような資料を求めて訪問する人種にとっては非常に有難い存在なのは疑いようもありません。  しかし一方で今回のような小規模(失礼!)な展示の場合、自分の興味の有無にとらわらず「とりあえず端から端まで見てやろう」という気にさせられるのが良いところ。興味のあるところだけザッと見れば10分で終わる内容でも、自分から積極的に興味を持とうと飛び込んでいけば、1時間、2時間は潰せる程の展示品が凝縮されています。それで新たな発見があったり、新分野への興味が沸いて趣味の幅が広がれば万々歳ではないですか。  全く課題を感じなかったわけでもありませんので失礼ながら書いておきますと、主に鉄道部品など一部の展示で説明不足が目立ったように思いました。マニアではない沿線一般の方には何が何だかわからない物もあるでしょうし、マニアの方から見てもその出自がわからなければ全国で見られる同様の品と区別が付かず、あえて飯田線に限定したせっかくの展示物も色褪せてしまいます。  これは先述の余裕を持たせ見やすさを重視した展示手法の副作用と思われますが、そのあたりはボランティアスタッフによる解説で補われておりました。ただほとんどが週末に限定されるため平日に来られた方にとってはやはり説明不足であり、またスタッフに付き従われるのが苦手な方もいらっしゃると思われます。  展示内で見やすさと情報量を両立するのが困難であれば、モノクロコピー物でも構わないので展示品目録のような解説書が欲しかったところです。「誰が作るんだ!?」というスタッフの悲鳴が聞こえてきそうですが、少なくとも知識量・情報量は十分に持ち合わせていらっしゃるとお見受けしましたので、今後の機会には無理を押して是非とも。問題は準備時間だろうなぁ・・・と、これは自分も当日の朝まで準備に追われていたので大きな声では言えませぬ。  好き放題書きましたが、だいたいの内情というか運営規模を知る者から見れば「よくぞここまで!」と唸らされる企画展でした。人口7万人の地方都市が期間限定の企画展でここまでの物を創り上げられたのはまさに御の字。伊那市創造館の皆様、監修の田切ネットワークの皆様、本当にお疲れ様でした。  ではここでいったん締めまして、後編でBVE運転会をレポートします。

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