BVE飯田保線区へようこそ
当ページは3DCGによる鉄道運転シミュレーターソフト「BVE trainsim」用の路線データ、および運転台型コントローラーの製作、またそれによる運転会等のイベントを開催している個人のサイトです。100%個人的な趣味活動によるもので、JR東海や各保線区とは一切関係ありません。
お知らせ
- Bve大阪運転オフ会2017は10/8~10/9の開催です。お申込みはこちら。
- 駒ヶ根市の鉄道100年記念事業 飯田線シミュレーター運転体験は無事終了しました。引き続き自治体様、企業様のオファーをお待ちしております。
■BVE trainsimとは
mackoy氏制作の3DCGによる鉄道運転シミュレータソフトです。市販ゲームソフトでは成し得なかったリアルな運転操作と挙動再現が体験できる極めて「シミュレータ寄り」の味付けが特徴のPC用ゲームソフトです。個人制作のソフトながらそのリアリティがコアな鉄道ファンに支持され、登場から改良を重ねて既に10年以上、ユーザー制作の車両・路線アドオン群とともに国内の同ジャンルでは唯一無二と言っても過言ではない一大勢力に成長しています。
「ユーザー制作の」と書いたとおり、車両や路線のデータをユーザー自身が制作し、本体ソフトに追加して運転できるのも大きな特徴の一つで、市販ソフトによくある「運転したい路線や車両が収録されていない!」といった不満を解消してくれます。ただしアマチュアがソフト開発に参加することと同義ですから、当然それなりの技術習得や製作期間は必要です。作品によっては完成までに年単位の時間を要しますが…そこは「運転したい!」という気合で乗り切りましょう。
手っ取り早く運転したい方はネット上を探してみると、そうやって制作されたデータが多数、しかも(私の知る限り全て)無償で公開されていますので、ダウンロードして運転してみましょう。ご近所・おなじみの路線や車両データが見つかるかもしれません。
無償・有償にかかわらずデータの公開はあくまで各作者の厚意であって義務ではありません。公開しないスタンスの作者に公開を迫ったり、自分勝手な要望を強いるようなことは止めましょう。またデータの制作には膨大な時間というコスト、場合によっては機材費や取材費など目に見えるコストが掛かっています。無償で提供しているからといってタダ同然の価値しか無いと思っている作者は居ません。手に入れたデータは作者の思いを尊重し、決して雑な扱いをされないようお願いします。
本来データはユーザー自身が作るもの。この原則が認知されていないと作品群とコミュニティの維持は出来ません。
■3DCGと運転"体験"シミュレータというもの
鉄道運転シミュレータには大きく分けて実写映像を使用したものと3DCGを使用したものがありまが、まずはそれぞれの長所短所を比較してみます。
- ■実写映像
- △ビデオ映像による実際の景色と寸分違わぬリアルな風景
- △路線データの制作が比較的短時間で済む(ビデオ映像と線形情報のマッチング)
- ▼再生速度を変速させるシステムなので低速~停車中の動的表現が困難
- ▼車体の動揺など挙動表現は運転操作時ではなく撮影時のものであることの違和感
- ▼運転室内にカメラを設置しての撮影はアマチュアではほぼ不可能
- ▼理想的な撮影環境としては可能な限り定速の専用列車が要る
- ▼撮影時の天候・日照等の条件で良い映像が収録できるとは限らない(再撮影は困難)
- ▼運転士の顔の前にカメラを設置する訳にはいかないので、厳密な視点位置の再現が困難
- ■3DCG
- △リアルタイムで描画に反映される車体挙動の臨場感
- △運転士の視点位置(多くは車体左寄り)を完全再現できる
- △停車中の乗客乗降による車体動揺や他列車、周辺風景の動的描画が可能
- △列車種別の違いによる入線ホームの変更なども臨機応変に可能
- ▼鉄道施設から建物、果ては草木に至るまで風景のCG化に膨大な時間がかかる
- ▼上記の理由により現実的なコストを考えると簡素なグラフィックになりがち
- ▼どれだけ頑張っても好条件で撮影された実写映像を超える見た目のリアリティは得難い
似て非なる分野に本職の運転士の訓練に使う"運転訓練シミュレータ"があります。なぜ似て非なるなのか? 「ゲームのもっと凄い版じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、訓練シミュレータとは実車による訓練の前に、基本操作とトラブル時の対応を訓練するための物です。ですから車両の挙動や「運転している臨場感」の再現に力を入れて開発する必要はなく、そんなものは実物の車両に乗ってから嫌というほど体感すれば良いわけです。アマチュアが鉄道車両を運転している気分に浸る…要は運転士ゴッコをするためのソフトとは要求されるものが全く違うため、同じ土俵の優劣という関係で語れるものではありません。
■BVEの路線データとは
風景の再現は実写映像、車体の挙動表現は3DCGに分があることが分かったところで、BVE Trainsimの路線データがどうやって作られているのか簡単に解説します。
路線データ制作の基礎は線路図や建設史といった資料に加え、入念な実地取材に基づく可能な限り正確な距離と曲線・勾配などの線形データ、駅プラットホームの長さと配置、列車の停止位置、信号機やそれに付随するATS地上子など運転に必要な保安設備などの各種情報を揃えて構文を打ち込んでいくところから始まります。
入力し終えたデータを試運転していると一見わずかな線形の誤差など気にならないように思えますが、それでも距離が違えば所要時間が変わってくる、曲線半径が違えば制限速度が変わる、曲線長が違えば制限のかかる距離も変わる…など、日本の鉄道の真骨頂とも言える秒単位で管理された定時運転を体験する上で無視できない誤差が生じます。
また後に風景を再現する際に線形がしっかりと出来ていないと、建物と線路の位置関係が一致せずチグハグな印象になってしまいますから、列車からの目視や動画の撮影、沿線を車、自転車、徒歩で巡り歩いての情報収集などを繰り返しながら実物に忠実な線形に近付けます。
次にホームや駅舎を個別に再現して駅ごとの個性を出す、架線柱を建てる、運転をサポートする標識類を充実させる、線路際の柵や塀を作る、といった見た目の作業に移行します。これらが完成してようやく「グリーンマット」と呼ばれる類の路線データの完成となります。グリーンマットとは線路周辺以外の風景が再現されていない、その名の通り草原のような状態の路線データを指しますが、運転に必要な情報は全て組み込まれているため、硬派なファンの中にはそれで十分という意見も少なくありません。
ベースとなるグリーンマットデータが完成したところで風景を付けるか否かの選択になりますが、風景を付けることで要求されるPCスペックの水準が高くなることや制作期間の大幅な増加、遠方の線路が風景に遮られることで線形が掴みにくくなるなどデメリットもありますから、一概に風景付きのデータが良いとも限りません。風景を付けるかグリーンマットで完成とするかは、作者の好みや想定しているプレイヤー層によって決められます。
ただし風景を再現するにしてもBVEの本質が"運転シミュレータ"である以上、線形の再現を蔑ろにして風景を付けたのでは本末転倒です。BVEの路線データで線形を重視するか、はたまた風景を重視するかといった議論がなされることが多くありますが、両者は二者択一で語るものではなく、線形の次のステップとして風景があるべきというのが持論です。
■BVE飯田保線区では
目指すものが運転体験シミュレータである以上、挙動のリアルさは妥協できない。でも実写映像のリアルな風景も捨てがたい…。先の項で3DCGによるリアルな風景を作る上でネックになるのは時間=コストであると書きましたが、ならば仕事(商品)ではなく採算度外視の趣味活動であれば際限なく作業時間を注ぎ込んで、実写映像に迫るクオリティのCGを作ることも可能なのではないか?という発想のもとで制作に取り組んでいます。
なぜ風景にこだわるのか。ひとつにはローカル線の運転ならではの単調さを埋めるため。複線で対向列車が次々と現れる都市部の路線を高速で走行するのであれば風景なしでもそれなりの充実感がありますが、いくら線形が複雑とはいえ単線を40~60km/hという低速で延々と走行していると、同じ所をグルグル走っているような錯覚に陥りがちです。集落や田畑、森や谷といった地域単位の変化、次々と後方に流れる建物や木々といったパーツ単位の変化を再現することで「先へ先へ移動している感覚」が得やすくなるのです。
また飯田線北部が地域密着型のローカル線であることも要素の一つです。全国的に自動車化の波によって風前の灯であるローカル線ですが、それでも学生や高齢者といった交通弱者が家々から駅に集まり列車に乗り込んで学校や病院といった目的地へ向かう。そうした情景を画面から読み取れるようにすることで「乗客を運んでいる」ことを実感し、たとえ画面の中の世界であっても緊張感のある運転が出来るのではないかと思います。
そして何より大きな理由は、目指すものが車両性能や線形改良の研究・検証に使用するような専門分野の物理シミュレータではなく、あくまで運転体験シミュレータ、つまりリアルな「運転士さんゴッコ」ができる環境であることです。
「この看板を過ぎたら加速して、あの建物のあたりでブレーキを掛ける…」といった沿線風景による運転補助は本職の運転士でもされていると聞きますし、建物や林が邪魔になって前方の見通しが利かない時は余計に集中力を必要とするでしょう。一方で安全第一とはいえ時には景色に目を遣って癒やされることもあるでしょうし、沿線から列車に向かって手を振るお子さんに振り返すといった心温まるエピソードもよく聞かれます。それらを含めて運転士の擬似体験であると考えているからには、鉄道施設に限らず運転士の目に見えているもの全てをデータに盛り込みたいのです。(つづく)