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デッキガーダー橋と架線柱

ファイル 14-1.jpg  鉄道模型や絵画の中で列車を引き立てるアクセントとして重宝するのが鉄橋やトンネルです。童謡『汽車ぽっぽ』の中でも「鉄橋だ♪」「トンネルだ♪」などと歌われているわけですが、風景の境目であったり、音の変化であったり、はたまたその構造物そのもののインパクトであったり、何かとワクワクさせられるアイテムですね。飯田線の飯田以北のトンネルは意外なことに伊那上郷~元善光寺間の一ヵ所しかありませんが、鉄橋については天竜川に注ぎ込む数々の支流を越える必要があるため、随所に架けられています。  ただ残念なのは全てガーダー橋であるため、絵的にはトラス橋ほどのインパクトがありません。これが模型や絵画なら横からの構図で楽しめるのですが、生憎 BVEは運転席の視点が基本ですから、枕木の見た目が少し変わる程度の変化しか感じられません。唯一の楽しみは鋼材が振動して発する轟音ですが、前後に急曲線が多いため30~40km/h程度のノロノロ運転になり、run音の特性上あまり轟音とは言えないノイズ混じりのサウンドになってしまうのが残念です。 ファイル 14-2.jpg  さて、鉄橋のストラクチャでレール部をどの程度作り込むかは以前より悩みの種になっていました。オーソドックスに行くなら枕木部を透過テクスチャでベタッと置いて、レールとガードレール、場合によっては渡り板も別パーツ化といったところでしょうか。しかし、枕木をテクスチャ1枚の平面で表現すると厚みが感じられず、特にノコギリ状に見えるべき右端に違和感を感じてしまいます。  なら枕木を1本1本座標で立体化すればリアルに見えるのかというと、そう単純な話でもなく、枕木表面の突起物(橋桁と枕木を固定するボルトの頭や、犬釘に相当するロール型バネやボルト類)、つまり運転台の視点から見た時に、枕木の前縁から前方へハミ出して見えるオブジェクトを立体的に描くには、一枚板でテクスチャをベタッと貼り付けた方がリアルに見えることもあるのです。 ファイル 14-3.jpg  そこで今回は折衷案、というか足して2で割らない、立体オブジェクトと板オブジェクト両方の要素を併せ持つ構造にしてみました。ワイヤフレーム表示にした画像をご覧いただければ一目瞭然ですが、基本的には枕木を全て立体化し、それぞれにテクスチャを貼り付けています。おかげで枕木両端部の立体感はバッチリ。また、上の画像で枕木左端をご覧いただければ分かりやすいかと思いますが、せっかくバラしたのだから枕木の長さを各々微妙に変えて、よりリアリティのある仕上がりを求めました。左側の手すりや通路の踏み板も例によって例のごとく寸法を微妙に変化させてグニャグニャ感を出していますが、皆様もう飽きられたと思うので詳細は割愛します。 ファイル 14-4.jpg  次は突起物類の処理です。この鉄橋では枕木のズレを防止するアングル材(けい材)が左右に取り付けられていますが、これより内側は板一枚にテクスチャをベタ貼りしたものを重ねて配置しています。文章で説明するのは難しいですが、上方から見おろした右の画像をご覧になれば、その構造をお分かりいただけるかと思います。これにより、ボルト類の突起などを表情豊かに描くことが出来ます。当然このように真上から見おろしてしまうと抜けているところと抜けていないところが出来てしまい違和感がありまくりですが、運転台からの視点に限って言えば、枕木の厚みがあるため下が抜けて見えることはあり得ず、問題にはなりません。  ちなみに、立体化した枕木の上面とテクスチャをベタ貼りした板オブジェクトを同じ高さに設定してしまうと、重複したテクスチャがチラチラと交互に表示されて鬱陶しいので、板オブジェクトの方を1cm浮かせて置いています。ミリ単位の差でもチラツキを押さえることはできますが、少し離れたところから見るとチラツキが再発することがありますので、少し余裕を持たせた方が良いでしょう。 ファイル 14-5.jpg  橋梁部の架線柱については以前の動画内でも座標による立体化に拘って・・・と紹介していましたが、手間をかけた割には実物の無骨なディテールを表現しきれておらず、喉に刺さった魚の小骨のようにずっと引っかかっていました。なので鉄橋のストラクチャ製作に合わせて全面的に再リニューアル。どうせ時間をかけるならと、やれることは全部やって当初想い描いていた理想のディテールを追求しました。  前作の至らなかった点は、全体的に鉄骨が細く貧弱だったのと、テクスチャにメリハリが無くリベットも再現していなかったこと。そのあたりを踏まえ、現地取材で得た詳細な写真から各部のディテールを検討し、完全新規に製作しました。 ファイル 14-6.jpg  例によってこちらもワイヤフレーム表示です。実は今回、リベットなどのディテールが複雑なため透過テクスチャを用いての製作も検討したのですが、解像度をかなり高めに設定してもαチャンネルとアンチエイリアスの兼ね合いで理想の描画品質を得ることが出来ませんでした。というわけで従来通り頂点を打って面を作り、それぞれにテクスチャを貼り付けていきました。小さなテクスチャでも輪郭がシャープに抜けて描画されるので、手間はかかりますがデータ容量と品質を考慮するならコレがベストなのではないかと思います。 ファイル 14-7.jpg  気合いを持続できず何回かに分けて製作しましたが、ようやく鉄橋まわり一式の再リニューアルが完了しました。時間はかかったものの、おかげで今の自分に出来るベストなモノが完成したと思います。  いくら低速とはいえ鉄橋を通過するのはわずか数秒間、しかもリベットなどのディテールが見て取れるのはホンの一瞬ですから自己満足に過ぎないと言われればその通りなのですが、しかしその瞬間が全体の印象に与える影響も馬鹿に出来ないモノではないでしょうか。  余談になってしまいますが、皆様は自分の満足するモノって作れていらっしゃるでしょうか? BVEに限らず仕事でも他の趣味でも何でも構いませんが、胸を張って「良い出来だ」と人に言えるほどのモノはなかなか作ることが出来ません。当然スキルは人それぞれですから世界を相手に言えるような人は希有でしょうが、少なくとも今の自分にできる最高の仕事・・・というのは誰にでも出来るはず・・・なんですが、それでも自己評価100点満点というのはナカナカ難しいモノです。  よくエライ人が「自己満足じゃダメだ」なんて仰ってるのを聞きますが、作った本人すら満足できない程度のモノで他人が満足してくれるわけもなく、自己満足こそが至高だというのが私の持論です。自己満足はダメと言うお方、エライ割には自身の仕事に対する満足レベルを随分低い水準に設定されていらっしゃるのだなぁ・・・なんて、少し悪意を含んだ解釈をしてしまったりもするのですが、兎にも角にも私個人は常に自己満足追求派でありたいと思っています。(まぁ、それではご飯が食べられなくなっちゃうのですが、その話はまた別の機会に・・・) ファイル 14-8.jpg  えらく逸れてしまいましたが、ぐるっと廻って冒頭のお話。長々と書きましたが、つまりは面白味のないガーダー橋もここまでやればそれなりのインパクトを与えることが出来るんじゃないか、と言うことです。せっかく鉄橋があるのにそこでワクワクしないというのは負けた気がしますので何とか打破したかったわけですが、ようやくこれで落ち着けそうです。  サウンド面での改善は難しいところですが、「いかにも轟音がしそう」という視覚イメージは細部を作り込むことによって再現可能と思います。そもそも、ほとんど音のしない鉄道模型や、音とは無縁の絵画であっても、轟音が伝わってくる作品というのは少なくありません。同じようにBVEのストラクチャも精密に作り込むことで重量や振動を視覚的に感じさせ、実際に鳴っているサウンドよりもリアルで重厚な音に脳内補正して感じることが出来るのではないかと考えています。

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