杉林の表現に目覚める
初夏から夏にかけて現地や近所で樹木や森林の写真を撮りまくりましたので、そのあたりの再リニューアルを進めています。最新版の動画でお気付きの方がいらっしゃるかもしれませんが、線路際の雑木林のストラクチャは陰影表現の強化や下部に盛り土を再現するなど、初期のものより少しディテールアップしています。 それに対して杉林のストラクチャはドコをどう改良すべきか方向性がまとまらず、リニューアル当初のままで動画を投稿しましたが、ようやく盛り土と下草の再現、陰影による立体感と遠近感の表現、テクスチャ解像度の向上という線で落ち着きました。 右の画像は上段が従来のもの、下段が新作ストラクチャに置き換えたもの。道床~地面~下草の繋ぎをどうすれば自然に見えるか、線路際や近所の林道などで似たようなシチュエーションを観察して考察・再現しました。あとはアクセントに低木を散らせば、より豊かな表情になるのではないかと思います。 そもそも従来の杉ストラクチャは陰影をどの角度で付けるか悩んだ挙句に決めかねて、ほとんど影を付けることなく完成させたものでしたから、いささか立体感に欠けるところがありました。と言うのも、この路線データは通学ラッシュが落ち着いた後の午前中をイメージして製作していますが、西から東へ走る下り列車から前方を見れば、日光は概ね右から左へ当たることになります。ということは樹木単体のオブジェクトですと左側に影ができるわけですが、森や林といった集合体になると並び立つ樹木がお互いに生成する影も加わるので、複合するとどんな影になるのか解釈が難しくなってきます。 最初に挙げた比較画像を例に解説しますと、線路の右側に並ぶ杉林に対して右から左へ日光が当たるという原則を当てはめると、線路側の面が影になり、旧ストラクチャもわずかにその傾向で陰影を付けていました。しかし、よくよく考えてみるとこの杉林、それなりに幅のある防風林ですから奥、つまり右側に行くほど暗くなるという解釈もできます。 試行錯誤した結果、木々の重なりが作り出す影を優先して表現することとし、樹木の中央部に影を設けるという、単体の樹木では有り得ない絵面になりました。おかげで暗い部分の手前に比較的明るい末端の葉が浮き上がるように見えるため、基本的には板オブジェクト同然ながらも随分と立体的に見えるようになりました。 Zバッファに起因する縁の透過不良防止と、針葉樹らしい刺々しい葉の輪郭を表現するため、葉の部分のテクスチャは512×1024ピクセルという巨大画像になっています。ただし、影を中心に持ってきた副産物として、テクスチャを左右反転させて使うことが出来るようになったため、2枚のテクスチャで4種類の樹木を作成し、メモリ使用量を少しでも減らすよう努めています。幹はほとんど目立たないので4本とも同じテクスチャで、こちらも多少のメモリ削減に。 出来上がった杉林のストラクチャですが、そのまま並べただけでは道路脇の並木のように幹の向こうがスカスカに透けて見えてしまい、奥行きや暗がりの迫力が感じられません。そこで、模型で言う背景パネルのようなモノを作り、盛り土・下草を表現したオブジェクトと一体化させています。 かなり暗めの色合いに設定していますので画像では分かりにくいかもしれませんが、背景部には杉林のテクスチャを貼り、奥行きを感じさせるようにしています。下草の部分も、線路に近い手前は明るく、奥に行くに従って暗くなるようにテクスチャを作ります。 最後は実際に路線データに配置し、全体の色合い・明暗のバランスを調整しますが、これが簡単なようで難しい。幹の部分は枝や葉の陰になりますから少し暗い目にしますが、しかし背景よりはわずかに明るくして浮かび上がるように、逆に背景のテクスチャを暗くしすぎるとディテールが潰れて見えなくなってしまうので明るすぎず暗すぎず・・・と。他にも架線柱に張った電線類を引き立たせるにはどれくらいの明るさが良いか、線路や道床との繋ぎは自然か、他の木々や周囲の風景とのバランスは取れているか・・・エトセトラエトセトラ、ありとあらゆる要素が密接に関係するので、トーンカーブをチョイと動かすだけでも「アチラを立てればコチラが立たず」といった具合で苦労させられます。