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DT33を本気で作ってみた

ファイル 18-1.jpg  鬱陶しい天気が続いていますが、梅雨の合間の曇り日こそ写真撮影に出掛けましょう。「天気が悪いのに写真?」と思われるかもしれませんが、テクスチャ素材を撮るには日光による影が出来にくい曇天日が最適です。特にフィルムカメラに比べてダイナミックレンジの狭いデジタルカメラは「白飛び・黒潰れ」が発生しやすいので、コントラストが低くなる曇天時の方がディテールを欠くことなく撮影できます。  退院して間もないため飯田方面への遠征取材は体力的にできませんが、近場で調達できるモノもありますから、できる範囲で撮り歩いています。先日は119 系電車と装備が近しい105系を撮影するため和歌山線へ行ってきました。メインは台車と床下機器の資料集めだったのですが、晴れの日なら影で真っ黒に潰れてしまう床下も、曇天のおかげで鮮明に撮影できました。  車体には見向きもせずに足回りばかり撮っている私が不審だったのでしょう、待機中の運転士さんが「何撮ってはりますのん?」と話しかけてこられました。幸い気さくな方でしばし国鉄車談義にお付き合いいただきましたが、「和歌山はゴミ箱みたいなモンですわ」とのお言葉には笑ってしまいました。しかし「私らにはアナログで運転しやすいですよ、まだまだ使えます」とも。日常的に利用する立場なら綺麗な新車も嬉しいのですが、味のある国鉄車も末永く頑張ってもらいたいものですね。  停車中の電車は片側の床下がホームで隠れて見えませんので、一駅だけでは素材が集まらず、和歌山、橋本、五条と渡り歩いて約500枚。台車と床下機器ばかり、角度を変え露出を変えこれでもかと撮りましたが、それでも帰宅して整理していると「なんでココが鮮明に写ってる画像が一枚も無いの!?」なんてことも多々あります。 ファイル 18-2.jpg  精密な車両ストラクチャを作る上で一番のネックはやはり台車まわりでしょう。横から見ての形状が複雑なので、1枚~数枚の透過テクスチャを用いて表現するのが一般的ですが、交換列車として自線の隣に配置してみると、ほぼ前方から、少しナナメ横から見おろすようなアングルになり、台車の厚みや丸みを表現していないと違和感を感じてしまいます。ですから台車を細かく立体化してみることにしました。手間がかかりすぎるので以前から避けてきた部分ですが、ようやく重い腰を上げての製作開始です。  正直なところ、手間と効果のバランス考えると「何が何でも立体化したい!」というわけでも無かったのですが、“丸みのあるモノを限られた頂点数で立体化する”練習をしなくては・・・と常々思っていましたので、ちょうど良い題材でもあったのです。 ファイル 18-3.jpg  例えば、車輪でも何でも構いませんが丸い物を表現する場合、比較的解像度の高い透過テクスチャを使用すれば滑らかな曲線の表現が可能ですが、厚みの表現ができません。また、環境によっては黒縁や透過不良といった問題も未解決です。これを頂点組みの立体オブジェクトに置き換えるわけですが、例えば円形を作る時に頂点数4、つまり四角形のオブジェクトでは当然ながら円には見えません。少し増やして6角形でも、まだまだ円とは程遠い。しかし8角形、10角形にもなれば(オブジェクトのサイズにもよりますが)だんだん円に見えてきます。20角形ともなれば、余程アップにして見ない限り完全な円に見えることでしょう。つまり3DCG上の円というのは頂点数の多い多角形ということになります。  とはいえ作る手間、動作時の負荷を考えると、どこまでも頂点数を増やして良いものではありませんから、如何に少ない頂点数で曲線・曲面に見せるか、というバランス取りが重要になります。  また、以前の記事でデッキガーダー橋の枕木部分について、立体化するよりもテクスチャに描き込んだ方がリアルに見える場合もあることを書きました。ですから製作時は「どこまでテクスチャで表現してどこから立体化するか、立体化する場合は曲面の分割数をどれくらいにするか」・・・、映像作品用の3DCGと違い、リアルタイムレンダリングによるゲーム用3DCGは、常にそういった妥協点の探り合いが必要になるわけです。 ファイル 18-4.jpg  作り方は簡単なオブジェクトと全く同様、地道に頂点を打ってはテクスチャを貼る・・・という作業が延々と続くだけですので、詳しい製作過程は割愛しますが、試行錯誤しながら3日間かけて台車の片面がやっとこさ完成しました。とりあえず“横から見ても前から見てもナナメから見ても立体に見える”という目標は達成したと思います。  しかし、妥協点、バランスの取り方を探るという点においては大失敗かな・・・。製作前は漠然と頂点数500くらいで台車ひとつ作れたら・・・なんて思っていたのですが、片面が完成した現時点での頂点数が553、これから反対側を作り、更に内側のブレーキ装置や車輪、車軸や歯車箱などを作り込んでいけば台車一つで1300~1500くらいの頂点数になってしまいそうです。ポリゴン数=面の数=AddFaceの数と解釈して間違いなければ、片面で230ポリゴンになるので、最終的には台車ひとつで500~600ポリゴンになるでしょう。この数字はオブジェクトひとつで数千~数万ポリゴンと言われる昨今の3D ゲーム情勢から考えれば屁でもない数ですが、BVEという枠の中で考えると、もう少し何とかならんかったのか・・・とも思います。 ファイル 18-5.jpg  動画のコメントなどで「作り込みが細かい」といったお褒めをいただいて悪い気はしませんし、細かく作り込むよう心がけている面もあります。ただ、その細かさが本当に必要な部分なのか、もしくはもっと簡略化しても同程度の見た目を維持できるのではないか?という疑念が常にあります。正直に言ってしまうと、私はそうした適度な省略や妥協といったものが極めて下手、というよりセンスが無いんだろうなぁ・・・と、これはBVEに限らず昔から痛感させられていることです。  省略するセンスがないからリアルに見せようと思うと時間をかけて作り込むしかないわけで、その重いデータを海外製ゲーム基準のPCスペックでぶん回しているだけ・・・、こうして書くと何とも芸のないことです。もちろん表面上の仕上がりについては自身で満足できるモノが出来るようになってきましたので、あまり自分で卑下するようなことも無いのですが、人それぞれ常に悩みながら作っているということです。 ファイル 18-6.jpg  実物のDT33は103系や119系をはじめ、兄貴分であるDT21ファミリーも含めると国鉄通勤・近郊型電車、気動車、果ては一部の私鉄でも採用され、全国どこへ行っても見ることができる(できた)標準的な台車です。子供の頃は優等列車至上主義でコイルバネの台車に興味は持てず、その次は懐古主義で旧国・旧客の大柄な台車に惹かれたため、これまで真面目に観察する機会も無かったのですが、なかなかどうして格好良い台車ではありませんか。斜め上から見おろした時に見える枕バネのふくよかな出っ張りなんてタマリマセンね。 ファイル 18-7.jpg  それなりのPCスペックでないと負荷がかかりすぎると思うので需要があるかはわかりませんが、完成したら台車単体で素材として配布する予定です。最初からひとつのパーツであることを意識して作りましたので、CreateMeshBuilderは一つだけ。Translate構文ひとつで全体が移動するので、車体に合わせて位置を調整するのが楽チンです。デメリットはパーツ単位で削除しての軽量化や改造ががほぼ不可能なこと。  他形式が欲しい方はご自身で作っていただくしかありませんが、データ内に実物のパーツ名を(正確じゃないかもしれませんが)コメントアウトで記入していますので、「この部分はどうやって作ってるんだろう?」といった感じで参考にしていただけると良いのではないかと思います。  テクスチャは各パーツの画像を集合体にしたものが1枚だけです。まだ空白部がありますが、車輪やブレーキ装置などの画像を放り込みます。上の119系に組み込んだ画像では、車体の明度と合わせるためにSetcolorで少し暗めにしていますが、元のテクスチャは応用が利くように明るく・彩度も高めに設定しています。載せる車体の色あいに合わせて調整して下さい。  データ配布時のガイドラインはまだ考えていませんが、こういうのが一番メンドクサイですね。飯田線のデータも一時的であれ永続的であれ、複数の方のデータをお借りして成り立っているからには、こちらもそれにお応えして「好きなように使って下さい」と言いたいところなんですが、昨今のBVE界を見ていると、時間をかけて作った愛着のあるデータを「どんな使い方をされても」黙っていられるほど私の心も広くないわけで、何らかの制限は必要だろうと思います。  個人々々で組み込んで遊んでいただく分には何の問題も無いわけですが、例えば自作の車体に組み込んでストラクチャを配布する場合などの二次配布の可否、条件とか、そのあたりが悩みどころです。

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