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取材空振り

 8/19~23の5日間、これまでの区間で抜け落ちている分と、延伸分の資料を集めるため現地取材に出かけてきましたが、生憎全日程通しての雨天。何とか捻出した数万円の旅費と休日を、全くの収穫無しで消化して帰ってきました。  天気のすることですから仕方がないとはいえ、いやむしろ、だからこそ気持ちの持って行き場所が無いというか、ぶっちゃけマジヘコミ。作業を進める気力も湧かずに悶々と過ごしておりました。  19日早朝に大阪を出発、豊橋から上諏訪直通519Mで飯田線をえっちらおっちら。佐久間で途中下車し、天竜川橋梁から旧線の痕跡を眺めつつ中部天竜の集落へ逆戻り。今回は取材のフットワークを強化すべく自転車を輪行してきましたので、佐久間ダム経由で大嵐駅までサイクリングです。 ファイル 68-1.jpg  佐久間ダムは建造から55年も経っていますが、155.5mの堤高は今でも国内第9位、当時では日本最大、世界でも第7位だった巨大ダムです。更に飯田線のうち18kmにも及ぶ区間の付け替えを要した発端ですから、一度見ておきたかったのです。  中部の集落からダムまではたった3kmくらいですが、実は体調の問題もあって自転車に乗るのは約2年ぶり。のっけから堤高分の標高差を稼ぐため延々と続く上り勾配は、出戻りには少々ハードでした。体力付けなきゃね。  佐久間ダムはその特徴でもある、上部に並ぶローラーゲートが巨大なためどこかアンバランスで、写真では全体の巨大さを感じにくいですね。ゲート横に立つエレベーター棟の窓間隔が一般のビルと同程度ですので、少しはその大きさを感じていただけますでしょうか。  コンクリの塊を堪能した後は天竜川右岸、つまり旧線の対岸を約30km走行して大嵐駅に到着。体力に余裕があれば温田あたりまでは飯田線に沿って走れそうでしたが、まぁ復帰第一弾としてはこのくらいが限界です。大人しく飯田線に揺られ、伊那市で下車。以前「巨大唐揚げ」を紹介した「みや川」で夕食を取って、この日の活動は終了です。  翌20日は予約していたレンタカーでの行動ですが、朝から完全に雨。本来は伊那大島~七久保の取材を予定したのですが、「いつか雨がやめば・・・」という希望に縋って、観光を兼ねた時間つぶしをすることになりました。 ファイル 68-2.jpg  伊那市から高遠を経て秋葉街道をひたすら南下、標高1000mの斜面に貼り付くように展開する下栗集落の「はんば亭」で昼食をとることに。コシの強い手打ち蕎麦の他に、飾らない地の料理が楽しめる「蕎麦定食」はどれも美味しくいただきましたが、惜しむらくは蕎麦がかなり小盛り。次の機会があれば盛り蕎麦単品で注文しましょうか。  下栗に着いたときは「雲の上」といった感じでしたが、食事をしている間に「雲の中」になってしまい、辺りは真っ白&霧雨に。おかげで風景の写真を撮る事はできませんでした。 ファイル 68-3.jpg  食後は林道の更に高所へ車を走らせ、しらびそ高原へ。雨が止む気配は感じられないので、なるべくお金をかけずに時間を潰せるところ・・・となると風呂。標高1912mに位置する「ハイランドしらびそ」のお風呂は温泉ではありませんが、湧き水を沸かしているとのこと。“ヌルヌル”とか“トロトロ”ではなく、“サラサラ”した独特のお湯で、“しっとり”と“サッパリ”という相反する浴後感を両立しています。宿泊施設ですが日帰り入浴も可能ですので、貸切状態でマッタリと。 ファイル 68-4.jpg  入浴後、相変わらずの霧雨で途方に暮れていたところ、なぜかこんな山の頂で酒井の5トン機を発見。しかも比較的状態の良い木造客車(といっても、2つの運材台車に箱を乗せただけの、いわゆる王滝タイプ)と、立派な材木を乗せた運材台車のフルセット。しかも運材台車なんて板バネの枕バネを装備した生意気なタイプ。事前情報はノーチェックでしたから、これは嬉しい誤算です。  説明の看板によれば遠山森林鉄道の物だそうで、実はこれまで存在すら知りませんでした。南信の森林鉄道=木曽谷しかイメージしていませんでしたし、どこの国鉄線とも接続されていない事も、知る機会が無かった一因でしょうか。  しかしこの静態保存、状態もさることながらロケーションが素晴らしく、今にも動き出しそうです。土木工事でこういう機関車を使う機会も無くなりましたし、立山砂防の機関車も新型に代替わり。そんな中、こんなに活き活きとしたプリムス・スタイルの機関車を今でも見る事が出来るのは素敵なことです。 ファイル 68-5.jpg  結局この日は日没まで雨のまま。七久保駅近くの道の駅「花の里いいじま」にて夕食。「馬肉蕎麦」なるものを食べてみましたが、これがなかなか絶品。肉は甘辛く下味が付けてあってクセも無いので、気軽に馬肉を食すにもってこいですね。この辺りはギリギリ関西文化圏なんですが、うどん・蕎麦のつゆは関東風。食文化は違うルーツがあるのか、調べてみたら面白いかもしれません。  晩はそのまま駐車場で車中泊。21日朝、とりあえずレンタカーを返却。当初の予定では自転車で駒ヶ根~沢渡周辺を1日かけて取材する予定でしたが、どうにもならない雨続き。この日の晩は松本市内にホテルを予約していましたので、取材は諦めて松本まで自転車で自走する事にしました。  伊那市から松本まで国道153→19号で、鉄道で言えば大八廻りの塩尻経由で、距離はだいたい60kmといったところ。出戻りの体力に加え、狭い路側帯、意外と多い交通量、そして雨天という悪条件のため速度はゆっくりめ。 ファイル 68-6.jpg  途中、雨脚が強くなってきたため、辰野と塩尻の境界にあたる矢彦神社で雨宿り。諏訪大社に次ぐ信濃国二之宮、そして上伊那地方の総鎮守とあって大変立派、貫禄たっぷりの神社です。面白いのが辰野側に矢彦神社、塩尻側に小野神社という、2つの神社が南北に隣接・・・というか、一つの境内に仲良く並んでいます。境界には塀も堀もありませんので別の神社だと気付かないほど。しかも小野神社の境内を含め周辺の行政区画は塩尻市に属しているのに対し、矢彦神社の境内だけは辰野町の飛び地というカオスっぷり。  本殿を写真に撮るのはあまり好きではありませんので、画像は矢彦神社の神楽殿と御柱。7年に一度の御柱祭は諏訪大社の翌年に行われています。 ファイル 68-7.jpg  大八廻りこと辰野支線がトンネルで抜けている善知鳥(うとう)峠を越えて塩尻の市街地へ。ちょうど現三州街道とされる国道153号の終点近くの「いずみ屋」さんで手打ち蕎麦の昼食としました。二段の盛り蕎麦は味もボリュームも十分。高い天井と太い梁が立派な店内も雰囲気満点で、大変ようございました。  ところで塩尻の地名は、太平洋側の三河・駿河から塩尻へ至る三州街道、秋葉街道、そして日本海側は糸魚川から塩尻へ至る千石街道、これらが塩を内陸へ輸送する「塩の道」であったことに由来します。塩の道の終点だから塩尻。鉄道で言えば前者は飯田線、後者は大糸線となり、今となっては何れも屈指のローカル線ですが、時代を遡れば国の生命線でもありました。上杉謙信が武田信玄に塩を送ったのも、大糸線経由で運んだと思えば感慨深いものです。 ファイル 68-8.jpg  無事に松本市内のホテルにチェックインし、体を休めた後は松本城周辺を散策したり、自転車屋を覗いてみたり。適当に時間を潰し、駅前のつけ蕎麦屋で夕食としました。関西では馴染みの薄いつけ蕎麦。歴史が浅い創作蕎麦のイメージもありますが、コレはコレでなかなか美味。正統派?の蕎麦続きでしたのでアクセントに良いですね。  22日も相変わらずの雨。ただし降ったり止んだりの微妙なお天気。本来なら既に取材を終え、黒部ダムでも見に行こうかと予定していたのですが、これまで何も出来ていませんのでキャンセル、天候の改善に期待して伊那谷へ戻る事にしました。  松本から塩尻は自転車で自走、塩尻からは嘘んこ快速「みすず」に乗車。昼過ぎに伊那市に着く頃には雨も上がり、路面も乾き始めている案配。この調子なら少しは取材もできそうです。  とりあえず沢渡駅の取材をしようと、伊那市駅前で自転車を組み立てて移動を開始しましたが、走行中にポツポツ・・・から土砂降りへ。沢渡に着いた時には駅舎も濡れてしまい、撮影できるコンディションではありませんでした。  23日まで休みを確保していましたが、諦めて1日早く帰ろうかな・・・と時刻表をめくってみると、ギリギリ当日中には帰ることが出来ないタイミング。なんだか今回はやることなすこと全てが裏目に出ている感じです。 ファイル 68-9.jpg  伊那市に戻り“飯島食堂”でマッタリ時刻表を眺めながら、久しぶりの巨大ソースカツ丼をいただきました。相変わらずデカくて美味いです。夕方からの営業は個室ですので、頭を捻るのにうってつけ。  もう1泊するにしても、列車の旅くらいは楽しんで帰らないとやってられませんので、上田で宿泊し、翌23日は長野から信越本線のお得列車「妙高」で直江津へ抜け、北陸本線では未だ健在な457系に揺られて帰阪しました。「蕎麦づくし」の〆として、長野駅と福井駅で駅蕎麦を食べたのですが、風味や食感の乏しいことに驚き。日頃それなりに美味いと思っていたのですが、ちゃんとした蕎麦を連続で食べた後では、その味気なさが顕著に感じられました。アレは何というか、「蕎麦のようなもの」ですね。まぁそんなに肥えた舌じゃありませんので、一週間もすれば普通に美味いと思えるようになりそうですが・・・。  というわけで、ほとんど蕎麦を食べに行っただけの5日間でした。これまでも草木が緑色をしている夏のうちに取材をし、翌年にかけてPC上での製作作業を進めるというスケジュールを取ってきましたが、ここに来て大ピンチ。  せめて暫定公開を予定している区間の不足だけでも補っておきたいところですが、もう一度訪問するにしても費用的に限界があるため、18きっぷ+漫画喫茶連泊+牛丼280円という強行軍になりそうです。いくら取材とはいえ侘びしいなぁ・・・。しかもこの週末は台風で潰れてしまい残り時間もありません。最終手段として平日にぶっちぎっちゃうのもアリですが、ちょっと片付けないといけない仕事が溜まっているので不透明。最悪の場合は暫定公開を1年遅らすかもしれません。

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