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カテゴリー「運転台」の記事は以下のとおりです。

天井周りのディテール強化

  • 2017/05/03 16:00
  • カテゴリー:運転台

 2016年後半から今年にかけて、運転台の天井をディテールアップしました。twitterに随時投稿していたもののマトメですが、記録として記事化しておきます。

■直通予備引きスイッチ

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 基本は単純な箱ですから2tのプラ板を5mmプラ角棒で裏打ちして箱組しています。上部のヒンジは見えないので省略、ツマミは鍋フタや引き出しのツマミに用いる汎用品を塗装して装着しました。プラ板の厚みは過去1mm厚を多用していましたが、接着剤や塗料の溶剤に負けて反り・歪みが発生することがあるので現在は2mm厚を使用しています。特に仕上げが艶ありだと僅かな反りも光線が歪んで目立つので、コストアップにはなりますが剛性を確保するようにしています。

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 各種銘板の原稿はPCで作ります。新型の電車に装備されている機器類の銘板は実物もPC上で所定のフォントを使用して作成されているためコピーするのが楽ですが、昔のものは工程が違うため描き起こすしかありません。

 近似のPCフォントで代用すると縦長・横長に変形させた文字(長体・平体という)を使用する時に違和感が大きくなります。旧来の製法では文字が縦長であろうが横長であろうが縦横の線幅は均一ですが(上)、PCフォントを変形させたものはその倍率によって線幅が変わってしまいます(下)。

 写真を元に文字の中心線をトレースして線画を描き起こすことで変形させても太さが変わらない文字原稿を作成しています。面倒ではありますがいずれにしてもPCフォントには無い特徴的な書体ですから、目立つ部分だけでも描き起こすと雰囲気はグッと良くなります。

20170503212025.jpg 国鉄標準の灰緑色で塗装しますが市販の塗料で近似する製品がありませんので調色します。各種数値や実物塗料を元に調色するやり方もありますが、実車部品も塗料の個体差や褪色具合によって微妙な違いがあるため感覚で作っています。黒1:白1:緑2を基本とし、あとは合わせたい部品の色、または自分の理想の色になるまで塗料を加減して調整します。

20170503111134.jpg 塗装は艶ありで仕上げますが、綺麗な艶を出すには塗料が垂れる寸前までコッテリ吹き付けるのがコツです。しかしそれだと調色した貴重な塗料を大量に消費しますので、色ムラの無い程度にサッと塗装し、後からクリアをコッテリ吹き付けるという手法で艶を出しています。

 銀色のツマミは適当な廃部品からもぎ取ったもの。最後に印刷した銘板(詳細後述)を両面テープで貼り付け、丸頭の釘を四隅に打って完成です。

■NFB盤

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 運転室右上にズラッと並んだNFB(ブレーカー)群、メカメカしさの演出に効果の大きい部品ですが、形式指定で手に入れるのはなかなか難しいものです。それ以前に拙作の運転台は高運転台の足元から30cmほどを省略して全体を低く作っていますので、出入口の高さ確保のためNFB盤も短縮する必要があります。写真資料から寸法を読みつつアレンジを施して自作していきます。

 傾斜面があるため補強に三角プラ棒を併用していること以外は引きスイッチ箱と同様、2mmプラ板と角棒の組み合わせで製作。ブレーカー本体は複製品のダミーで軽量化する案もありましたが、将来的にモニタや音響、照明機器のスイッチとして活用したいので実車用のモノを集めました。

 銘板は数が多いため原則として類似する機械彫刻用標準書体を使用し、先述の長体・平体やフォントに無い文字(これが結構ある)は写真からトレースして描き起こしました。これをレーザープリンターで銀色のラベルシールに印刷し、薄手のプラ板に貼り付け切り出せば完成です。表面保護として艶ありのトップコートを吹き付けましたがこれは艶が均一になり失敗でした。銀色のラベル地と艶消しトナーの文字でツヤ感が違うほうが立体的であったと思います。

■信号炎管

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 ほぼ緑色一色の運転室にあって一際アクセントになるのは金色の信号炎管。正確にはその収納容器ですが、保安装置に連動してエア駆動で着火させる構造になっています。実物部品はあまり流通せず、あったところでかなりの重量物ですからアクリルパイプで軽量なレプリカを自作します。

 写真と資料から寸法を割り出してPCで作図、アクリルパイプを綺麗にカットするのは結構な手間なので最初から寸法を指定してカット済みの材料を購入しました。あとはプラ板、プラ棒、パテをアレコレしてそれらしく造形、丸いモノなのでどの角度から見ても破綻しないように気をつけながら作業します。ベース部の実物は半円状に割ったものを2つ合わせてネジ止めしていますが、素材的に強度確保を考慮して一体とし、割れ目の部分だけそれらしく造形して再現しました。

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 ローレットの入ったリングはNC彫刻機でスジ彫したプラ板を貼り付けました。市販の模様入りプラ板でも構いませんがサイズが小さい&値段が結構高い…ということで自作。 ハンドルは実物を観察したところ雑い鋳物を平面だけグラインダーで整えて製造しているように見えましたので、溶きパテを点描のように盛って凹凸を表現、赤い塗料をコッテリ吹き付けるとナカナカそれらしい鋳物感になりました。 20170503144235.jpg

 ステンレスの筒部は糊付きのステンレス泊を巻き、真鍮(砲金?)の部分はメッキ調スプレーを吹き付けました。塗膜の強度が低い…というか表面を粉っぽくすることで金属的な輝きを模している塗料なので剥げやすいのが難点ですが、手で触る部分では無いので良しとしましょう。

 基部のブラケットに経年の汚れを塗装で施し、玉とヒモ、これまでと同様の手法で作成した銘板を貼り付けて一応の完成です。本来は胴からエアの配管が伸びているので運転室全体の進捗に合わせて追加工事を行います。他にも検査済サインの入った封印テープなどペタペタ雑く貼ってやると一層雰囲気が出そうですね。

 ■天井蛍光灯

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 これまでずっと四角い穴に蛍光灯スタンドを突っ込んだだけで些かみっともなかったのですが、ようやく蛍光灯ユニットも製作。こちらはプラ板だけでは歪みに対する強度が足りないので、MDFで作った箱にプラ板を貼り付けて化粧する流れとしました。そんなに難しい形状ではありませんが、凹みのR部をパテ盛り整形しなくてはいけない箇所が多く手がかかります。

 蛍光灯ソケットは実車と同じデザインの物が手に入らなかったので比較的形状の似ている物をチョイス、蛍光灯本体は安物のLEDランプを使用しましたが、いずれ調光回路を組み込みBVEの”CabIlluminance”と連動して環境光を明暗させる目論見です。

 ■ベンチレーター

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 天井に設けられた換気口を再現しますが、ユルくカーブした羽根の再現が難易度高め。プラ板を力や熱で曲げてみるものの、なかなか均一には曲がってくれません。というわけで元から曲がったモノを探すしか…と選んだのは大径の雨樋。これを短冊状に切って角を丸め、プライマー処理、サフ吹きを経てアルミ色に塗装しました。

 アルミ製と思われる枠をプラ板・プラ棒で作り、羽根はプラ丸棒を接着して穴に通しました。実物では開閉を調整するツマミが前方に付きますが、クロムメッキ風の仕上げをどう処理するか悩んで手を付けていません。余力があればいずれ追加工作します。

20170503153724.jpg その他細かな工作・修正を施し、諸々の機材を装着して天井周りは実車に近いゴチャゴチャ感となりました。BVEで運転しているぶんにはほとんど目をやることのない範囲ですが、込み入った機械に囲まれて運転しているというだけで臨場感はアップします。

 長くかかりましたが天井はこれで一段落とし、次は乗務員室ドア周りのモールや蝶番の再現、車掌弁など左壁面のディテール工作に移ります。  

運転台から運転室へ(前編)

  • 2015/07/02 17:30
  • カテゴリー:運転台

 6月の大阪運転オフ会も無事に終了してひと段落つきました。運転会のレポートは公式ブログに掲載されると思いますのでそちらに譲りますが、機材担当としては作り込みきれず不満の残るところが多々ありましたので、気の早い話ですが来年に向けて制作作業を再開しております。

 その運転台関係に焦点を当てた記事は3年以上前に書いたきりで、以後はTwitterやイベント報告に散在している状態ですので、これを機に2015年仕様をまとめてご紹介しておきます。詳細記事は長くなりますが、今現在運転台を作られている方、これから作ろうという方のヒントになる部分もあると思いますので、興味のある方はお読み下さい。

 

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 モデルは1983年から2012年までの30年間、飯田線を走り続けた119系電車。その運転台を可能な限り忠実に、また原寸大で再現しています。

 過去記事や動画で紹介していた状態と比較すると、窓上~天井の拡張、また左側には乗務員室扉を増設、設置スペースの都合でデフォルメ・短縮していた右側の壁もリアルサイズに修正しています。

 画面は車窓表示にフルHDの液晶TVを3台、それに加え情報表示用のサブモニタが1台、メーターユニットに埋め込んだモニタが2台となり、計6台の液晶モニタを使用しています。いずれは4K液晶を3台…といった夢も広がりますが費用面はもちろん、それ以前の問題として4K×3台の環境でを安定してBVEを描画できるPCが現時点で存在しないため、技術の進歩を待つしかありません。

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 壁や扉、天井部分の増設は新たな設置場所――内輪では「保線小屋」と呼んでいますが――、自宅裏庭に木造の小屋を確保できたため、規模・重量の制約が大きく緩和されたことが功を奏しています。

 これまで何度か本職の運転士に実車とどこが違うか?を聞かせてもらっていたのですが、「こんな感じなんだけど密室感が足りない」とのことですので、これで大きな不満は潰せたのではないかと思います。

 またソフト面ではPC・BVEとの連携において、車両データ制作をお願いしているRock_On氏による各種プラグイン、プログラム類のおかげで飛躍的に精密・高精度、また自由度の高い制御が実現していることにも触れつつ、以下に各部の詳細を記していきます。

 

■メカ的な改良部分

20150701135110.jpg 製作初期のブレーキ弁は接点と切替スイッチを使用したもの、その次が多数のカムを使用して段数を増やしたものへと改良してきましたが、BVE本体の仕様上どうしても段の取りこぼしが発生して精度が良くないため、アナログジョイスティック化することになりました。

 7台のゲームパッドからのボタン信号をキーに読み替えていた従来のシステムは、各USB機器の認識順序を絶対指定できないwindowsの作りそのものの問題もあって設置・設定が非常に煩雑でしたが、今回はUSBケーブル1本で接続して制御はBVEの入力プラグインによるため大変簡便になりました。

20150701135115.jpg ハンドルの回転角をギアで調整して可変抵抗を回し、ジョイスティックコントローラー基板へ送ります。使用した基板は英国LeoBodnar社製のBU0836というもので、アナログ8軸、ボタン32個+ハットスイッチが入力可能という極めて汎用性の高いコントローラーです。

 ドライバ不要でwindowsの汎用ゲームコントローラーとして認識するため非常に扱いやすい。はじめは市販のジョイスティックを分解して基板だけを流用するつもりでしたが、こちらのほうが精度も汎用性も圧倒的に高いため乗り換えました。

 BVEでの認識はRock_On氏製作の入力プラグインにて行いますが、今のところブレーキ弁のセルフラップ帯を0.5度刻みにした160段設定で安定動作しています。高精度な可変抵抗を使用していますが、それでも微弱なチャタリングが発生するため、チャタ分の不安定な動作を拾わないようにプラグイン側で調整・設定可能なスグレモノ。

 マスコンの力行・抑速ハンドル、レバーサハンドルも同様にアナログ軸で拾うように改良。全てがUSB1本で賄えるというのは夢のようです。プラグインは更に安定性と汎用性を高めるよう改良中のようですので、いずれこれが公の場に出ればハードルの高かった自作コントローラーも飛躍的に作りやすくなるでしょう。今後に期待です。

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 メーター表示用の液晶モニタは当初HD解像度(1366x768)の物を使用していましたが、視野角が極端に狭いのがクセモノでした。そもそもメーターの寸法に合致する15.6インチというサイズに選択肢が殆ど無く苦肉の選択だったわけですが、時代が進んでフルHD(1920x1080)解像度かつ広視野角のIPS液晶パネルが手に入るようになりましたので交換です。運転士の座高の変化はもちろん、撮影のために極端に上から、下から見ても白く飛んだり黒く潰れたりすることは無くなりました。LGのLP156WF4-SLB1を大陸製の怪しげなコントローラー基板M.NT68676で駆動させていますが、画質・安定性ともに良好です。

 メーター用モニタの描画はBVEを動かすメインPCではなく、別に用意したサブPCが行います。メインPCのBVEプラグインから各種情報をLANに投げ、サブPCに用意したパネル専用のプログラムを用いて描画する方式。これによりメインPCの負荷を下げBVEのフレームレートを維持しています。プラグインおよび描画プログラムはもちろんRock_On氏の作品。ありがたや~ありがたや。

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 現在BVE5.6では各種情報表示の自由度が上がり、各項目をマウスでドラッグすることで移動出来るようになりました。またsetting/Preferences.xmlをテキストエディタで編集することで各々のフォントサイズを変更することも可能となり、これらを応用して情報表示用サブモニタを設置しました。

 イベント等で初見の方が運転する場合は補助表示があったほうが良いのですが、かといって運転画面の中に本来無いものを持ち込むのはシミュレータとして抵抗があります。後付TIMSのような案もありましたが、やはり119系には無かったものですから、こうして基本視界の範囲外である左ドア外側に設置するのが妥協案となりました。

 またBVE本体の機能である停止位置目標のバーは表示を大きく見やすくした上で左モニタの左端に設定、これにより停車時の運転士は窓から外を覗き込みながらブレーキ操作を行いますので、観客として見ていてもリアリティを感じるようになりました。

 

後編は主に筐体の工作についてです。

運転台から運転室へ(後編)

  • 2015/07/02 17:30
  • カテゴリー:運転台

前編からの続きです。

 

■乗務員室ドアの製作

20150701134956.jpg 前方のモニタを3画面化したものの、手前にドアや窓が無いTV丸出しの不格好な状態で運用していましたが、ようやくドアらしきモノが付きました。

 分割して容易に持ち運びができるのは大原則ですので、例によって基本構造は軽量な木造。ベニヤと角材の箱組にて構成しています。

 実車の材質は窓枠がアルミ、ドア本体の内張りがステンレスですのでそれらの薄板を貼り付けて質感を再現しますが、ベニヤの表面にそのまま貼り付けたのでは木目やササクレが影響して平滑性が維持できない可能性があるため、まずは他の壁面と同様プラ板を貼り付けて表面を整えています。

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 窓枠に用いたアルミ薄板はホームセンターで販売されている0.2mm厚のロール状のもの。柔らかく加工しやすい材質のため、おおまかに貼ってから窓部を切り抜き、エッジの折り曲げは指の力で作業することができました。

 問題はステンレス板。同じくホームセンターで売っているロール状の物で厚みはアルミの半分で0.1mm、これが恐ろしく硬い上にバネ性が強い。先に貼って窓まわりを折り曲げようにも手の力では簡単に曲がらず、かといって先に治具を使って加工してから貼り付けるのでは位置合わせが非常にシビアなものとなり、皺や気泡に気を配る余裕がなくなるためオススメできません。

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 結局0.1mm厚の使用は折り曲げ加工の少ない簡単な形状の部分のみに限定し、窓まわりには0.05mm厚のステンレステープを使用しました。この厚みになると凹み傷が付きやすいため出来るだけ使いたくは無かったのですが、そこは技術的限界から妥協。試行錯誤の末、何とかそれらしい造形に仕上げることができました。

 ドア縁の二枚重ねになっている補強部分は断面を銀色に塗装したプラ板の上に同じくステンレステープを貼り、金属丸棒をハンマーで打ち付けることによりスポット溶接痕を表現しています。

 窓枠のHゴムはスポンジゴム製のクッション材を1/4丸断面にカットしたもの。実物と比べると随分柔らかいのですが、色艶が非常に似ていることと、イメージに近い半径の物がホームセンターにありましたので採用しました。

 

■右側仕切り壁のサイズ修正

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 当初右側の壁は設置面積の制約で奥行きを20cmほど短くアレンジ、これにより正面貫通扉窓を見通すための窓が実車の半分くらいのサイズになっていました。せっかく右側にも車窓表示用のモニタを設置してもほとんど見えず勿体ないためリアルサイズに修正。旧作を改修する手もありましたが継ぎ目の処理や強度の確保が面倒なため、新造するほうが手っ取り早いという結論に達しました。

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 窓枠はR部分を新規に作るのが手間なので従来のものを流用、ふたつに切って間にプラ材を挿入して整形しています。図面があるわけではないので正確な寸法は分かりませんが、ほぼ正方形の窓は意外と大きく、ここから前面貫通扉の縦長窓越しに右側の状況がよく見える設計になっていることがよく分かりました。

 ついでに窓枠材の厚みが従来の1mmでは実車と比較して存在感に欠ける感じがしたので、プラ板を貼り重ねて2mmに変更しました。

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 従来から装着していた各種機材を新しい壁面に復帰させておおまかに完成。窓が大きくなったことで非常に見通しが良くなりました。

 中央のモニタと右モニタの間にベゼル(モニタの縁)分の空白部が発生するため完全に連続した映像にはなっていませんが、運転していると境界を意識することはほとんどありません。画角が広角になったことで速度感を得やすく、停車の感覚も掴みやすくなりました。

 問題は…広角になった分、遠方の景色が途切れている箇所が目立つようになってしまい、路線データの風景を左右方向に拡張する必要が出てしまいました。何か良い誤魔化し方を考えなくては...。

 

■天井の装着

20150701135144.jpg 窓上でカットしていた従来の運転台ですが、これはパイプベッドの下段に収めることを前提として設計したものでした。保線小屋のおかげで寸法の制約はほとんど無くなりましたので、上に載せる天井を追加製作します。

 運転室の天井は車体断面に近い客室とは異なり、かなり角ばった四角い形状をしているのですが、この天井が水平なのか片流れなのかが写真からでは判別できず、119系譲渡先のえちぜん鉄道へMC7000系を見に行くところから設計スタート。実物を見てみると一目瞭然、左端のR部以外の天井は水平であることがわかりました。

20150701135149.jpg 場合によっては木造船を作るような格子状のフレームが必要になるもと考えていたのですが、天井が水平ならば構造も簡単で済みます。基本はまたもやベニヤと角材の箱組とし、R部分は弧を切り抜いた板を量産して角に接着、化粧板を貼り付ける際のサポートとしました。

 余談ですが写真の形式プレートは実車のもの。基本的に実物部品そのものにはあまり興味のない私ですが、トップナンバー車の遺品とあっては我慢できず(お財布的に)ちょっと頑張って入手しました。クモハならもっと良かったけど贅沢は言うまい。

20150701135156.jpg 天井部製作で最大のネックは窓上に設けられたATS機器収納箱のパンチングメタル部。部分加工なので市販の規格品は使えず、以前の動画にも登場しているCNC彫刻機でプラ板を切り抜いて作ることにしました。機械が勝手にやってくれると思いきや、ワークのサイズが機械の加工範囲に収まらず、途中で位置をずらし二度に分けて加工する変則技を発動、また回転刃で切削するためプラ板が溶け出す事案も連発し、何とか鑑賞に耐えるレベルのものを作るのに一昼夜を要しました。

20150701135201.jpg R部のサポートに沿わせてプラ板を貼り、各種部材を装着すればベニヤの箱が一気に電車の天井らしくなる不思議、これまでの苦労も報われるというものです。

 電車のモックを作る際で苦慮するのは角にぐるりと引き回されたアルミモールの再現。これまでは市販の住宅建材を使用していましたが、鉄道用のモノはそれよりも肉厚でエッジに丸みが付けられているのが特徴です。入手する機会はほぼ皆無ですので、プラ材を組み合わせて自作し塗装で仕上げました。幸いアルマイトの色味は塗料の色でも近い風合いが出せるので大きな違和感はないでしょう。

 

■乗務員室仕切り壁の製作

20150701134730.jpg 左右の壁が延長され天井まで付くと、それらにフタをする壁が欲しくなるというもの。いよいよ密閉空間の仕上げに掛かりますが、運転室を箱状にするにあたって悩むのがスピーカーの設置場所。音響の質を重視すると理想的な設置場所は自ずと限定されますが、元々限られたスペースに見た目の処理も両立させようとすると設置はほぼ不可能です。そこで発想の転換、壁そのものを大きなスピーカーボックスとして製作することにしました。

20150701134825.jpg 構造は箱鳴りを回避するため18mm厚のMDF材。スピーカーユニットは音質が大変良好であったONKYOのD-212EXから拝借しました。壁の厚みを実車寸法に合わせたためスピーカーとしては箱の奥行きが足らず、そのぶん天地寸法を大きく取って元製品と同等以上の容積を確保しています。

 中低音を担うウーファーは床下からの響きを意識して膝の高さに、高音は直線的にしか音が飛ばないので耳の高さにツィーターを設置、吸音材の量を調整して蓋をすれば完成。後ろから音が鳴ることによって車両の先頭に居る臨場感を演出しています。

20150701134745.jpg 仕切り壁の小窓はイベント時の観客に配慮し、実車比で五割増のサイズに大きくアレンジ。観客の視界が限られてしまうため見る側は楽しめなくなるのではないか?と、視界と密室感の両立に苦慮した結果なのですが、運転会では観客側も乗り鉄気分になると反応は上々でホッとしました。

 工期遅れのため塗装とアルミモール類の製作、客室側の化粧がまだ手付かずですが、続きは焦らずじっくり進めたいところです。

 

 全体の進捗としては、絵画に例えればまだ輪郭が描けたところでまだまだ細部の作り込みを進めなくてはならない段階ですが、とりあえずはひと段落。ようやくここまで来たかと感慨深いところです。

 更にやるべきこと・やりたいことを書き出せば今思い付くだけでも軽く数年分の作業量がありそうですが、私は製作物の完成が見えてくると急にやる気を無くす悪い癖があるので、いつ完成するかもわからない路線データと運転台はライフワークとして最適なのかもしれません。まだまだ長いこと遊ばせてくれそうなBVEに感謝です!

運転台は仕上げ工程へ

ファイル 77-1.jpg  運転オフ会にお持ちします実物大の119系運転台型コントローラー。実のところ「間に合うかな?」と冷や汗ものだったのですが、日々着々と工作を進めましてようやく仮組みまで漕ぎ着けました。  既に掲載済のマスコンとブレーキ弁の頭・ハンドル、メーターの風防、時刻表灯は実物廃品。それ以外は全て自作になります。実物が入手できれば一番楽なのですが119系は独自仕様の物が多く、また実物の廃車がたくさん出たとはいえ、残念ながら近年のJR東海は部品販売を行わないのが通例となっています。 ファイル 77-2.jpg  左壁面には保安装置などの機器が並びます。空洞になっているところには限流値の切り替えスイッチが入りますが、入手できたカムスイッチはツマミの形状が違う物だったため、実物を模して作り直しているところです。  上方に付けた縦長のスイッチがATS元電源。こちらは実際に配線していますので、運転開始時は電源を投入と同時にチャイム鳴動、警報持続ボタンで停止させる動作を行います。パン上げボタン・連絡ブザーは配線無しのダミーです。 ファイル 77-3.jpg  スイッチ箱も完成しました。ATS確認ボタンをバシッと叩くため強度が必要だろうと想定し、合板でしっかり組んだ木箱にプラ板の化粧を施しています。前照灯・室内灯関係のスイッチはプラ造形のダミー。力を入れて動かそうとすると折れちゃいますので、運転会参加の方はご注意下さい。  ボックス手前のエッジは擦れて地金が露出しているところ、それが錆びているところ、下地塗装の層と灰緑色の層を表現したいので、後日ゆっくり時間を取って塗装します。 ファイル 77-4.jpg  壁面は間延びしがちですので、窓枠のディテールを念入りに再現しました。運転中に注視するようなところではありませんが、やはり板に四角い穴を開けただけではリアリティがありません。開口部の奥行き、折り返されたユニット構造の縁、ガラスを押さえるアルミアングル・・・、出来る限り実車の表情を写し取り、それらしく再現しました。  四隅のRを再現するには手間も技術も必要。さすがに個人で金属のアングルを曲げ加工するのは困難なため、全てプラ工作です。窓押さえのアングルはプラ材から工作して塗装した物ですが、壁面角の突き合わせ部分に取り付けたアングルは汎用のアルミ材。金属の中でもツヤの無いアルミは塗装で質感を模すのが比較的簡単で、違和感なく溶け込んでいます。 ファイル 77-5.jpg  バイザーもほぼプラ工作で纏めました。左右で形状の異なるヒンジも忠実に再現。ディテールを再現する上で必要なパーツであることはもちろん、モニタが存在しない窓上部の目隠しも兼ねています。  前面窓に組み込んだ液晶TVは32インチの物ですが、縦横比16:9だと圧倒的に天地寸法が足りていません。だったらより大きな37/40インチを使えばいいのでは?と思われるかもしれませんが、同じフルHDの解像度で画面サイズを上げてしまうとドットピッチが荒くなり、視聴距離1メートル以下の用途には適しません。  試行錯誤した結果、できるだけドットピッチを狭めることを最優先し、デッドゾーンが出来ないよう窓幅ギリギリの32インチTVを採用、余る上部は目隠しをするのが最善と考えました。  まだ作り込みの必要なところもありますが、この調子なら会期までに仕上げる事が出来そうです。ただマスコンの逆回し抑速についてはマスコン内部の改修が大がかりになるため、間に合うかは不透明。また、より信頼性の高いブレーキ弁構造も思い付いたのですが、そちらもまるっきり作り直しになるので、間に合いそうに無ければ手を付けずに持って行きます。 ※運転オフ会について  今のところ参加決定の方が主催者含め15人強、仕事の都合がクリアできれば参加されるという方も含めれば20人ほどになっています。とはいえ2日間通しで参加される方ばかりではありませんので、まだ人数には余裕があるかと思います。  運転台は完全な状態に仕上げて持ち込みますので、興味を持たれた方は是非ともご参加下さいませ。

いよいよ内装工事へ

ファイル 65-1.jpg  ただでさえ暑い上に節電だ何だと厳しい日々が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。こちらは日曜CG屋から日曜大工にクラスチェンジして、汗だくの屋外作業をしておりました。  運転台一式を囲う壁の部分を造っていたのですが、さすがにこういった作業を平日深夜にするわけにも行かず、昼間まとまった時間を確保できるときに、一気に進めました。角材、合板による骨格は完成しまして、これから内装のお化粧に移ろうというところです。  実車の詳細な図面がありませんので、各部寸法は写真を元に割り出したものですが、大きな誤差は無いと思われます。全体の寸法は横幅約1メートル、奥行き55センチ、高さ140センチ。キャスター付きですのでゴロゴロ転がして押し入れに収納できます。  室内に置いているとなかなかの威圧感ですが、チョットした鉄道模型のレイアウト(ジオラマ)と比較すれば、占有面積としてはたいしたこと無い・・・というか、まだ健全かもしれません。それでいて再現できる路線長は無限に等しいのですから素晴らしいものです。 ファイル 65-2.jpg  左側の壁面は、ちょうど乗務員室扉との境目くらいまでの寸法ですので、実物そのままのパーツ配置が可能になりました。警報持続ボタンは、形状からして富士電機の旧製品で間違いないと思うのですが、ボタンが白いものは入手できず、塗装しなくてはなりません。他に限流値切り替えスイッチ、パンタ上げボタン、連絡ブザーのボタンが付きますが、これらは形状のみのダミーで再現する予定です。  現在、実車の左壁面はワンマン化にあわせたEB装置搭載の改造時に、保安装置類の小箱が各種増設されて賑やかになっていますが、路線データに合わせ、比較的シンプルだった時代を想定しています。  中央のスイッチ箱は既に一部プラ板による化粧を始めています。パンタ下げボタンの周囲はすり鉢状に窪んでいるのですが、実はヤクルトの容器を切り出し、接着・整形したもの。冗談みたいな話ですが、使えるものは何でも使います。 ファイル 65-3.jpg  この角度で見るとよく分かりますが、119系の操作系は少し傾けて固定されています。おかげでデスク部分には相応の強度が必要になり、また形状もタダの四角では無いため造るのが少し面倒に・・・。なんせマスコンだけでも20kg超。しっかり補強を入れておかないと、後から板が反ってくるようでは困ります。  とはいえ組み付けたハンドルを握ってみると、非常にしっくり来る感覚。他の計器類や時計、時刻表灯なども理にかなった配置になっていることが、実物大で再現することで良く理解できました。最近では何でもヌルッとしたデザインにして「人間工学だ」なんて言ってますが、何のことはない、機械というものは昔から人の使いやすいように出来ているものです。  実車の右壁面(貫通路との仕切り)は、あと20センチほど手前まで伸びているのですが、これ以上延ばすと収納スペースに収まらなくなってしまうのでデフォルメしました。仕方がないことですが、無線機や放送装置を取り付けることが出来なくなってしまったのは残念。フェイクでも良いので、あのゴチャゴチャ感は造り込んでみたかったところです。  マスコンの接点については、抑速ノッチを使わなければ簡単に改造できそうなため、後回しにしました。そもそも飯田線で抑速がまともに機能しているのか、例えば制限40で30‰の下り勾配なんてシチュエーションで、発電ブレーキが有効に作用するとは思えないのですが、このあたりは次回の取材時によ~く観察してみます。  とりあえず、この調子でいけば来月中には塗装を終えて完成できそうな気がしてきました。構想から約一年半、いよいよでございます。

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