伊那福岡再考
小町屋、駒ヶ根に引き続き、「できるだけ実際の景色をそのまま立体化する」をテーマに、伊那福岡駅周辺を作り直しました。以前も書いたような気がしますが、伊那福岡のセメントサイロをリアルにしたかったというのが、路線データのリニューアルを始めたきっかけで、その頃から数えて実に4度目のサイロ製作です。細かなディテールの変更や追加はあるかもしれませんが、大まかにはこれが完成形・・・と思いたいところ。 動画「その4.9」に登場した3代目ストラクチャも、そこそこイイ線行ってたと思うのですが、実はアレ、実物の1.5倍くらいのサイズだったのです。大きいモノをより大きく見せて迫力を出そうという意図だったので、ある程度わかってやっていたことなのですが、周辺の作り込みが進んでくると、他のストラクチャとのサイズ比や、土地面積のバランスがおかしくなってしまうので、ほぼリアルサイズで作り直しました。ただ、まんま実寸だと余りに迫力不足でしたので、一割程度大きめに作っています。 こうした表現上のデフォルメは、実写録画映像のシミュレータではできないことですね。例えば、誰でも知っているようなランドマーク的な建築物を、今回の様に少し大きく作って目立たせるとか、実際は角度的に運転席からほとんど見えないのだけれど、少し線路に寄せて配置してみるとか、本来は手前にある木々や住宅が邪魔して見えにくいのだけれど、それらを少し端折って目立たせる・・・といった「嘘」は、好き嫌いがあると思いますが、楽しみを演出する上でアリだと思います。 とはいえどの程度までの嘘が許容されるかは難しいところで、またもや「某列車で行こう9」を引き合いに出して申し訳ありませんが、全体的にリアルな造形の中で、一部のオブジェクトのサイズだけを2倍にまで大きくして「デフォルメ表現だ」と言い張るのは、いささかセンスが無さ過ぎるというものです。 最初の画像は国道153号(三州街道)の跨線橋からズームしたイメージ、そして今度は線路脇の生活道から仰ぎ見る感じで。 奥の金属製サイロの横には四角い塔状のバケットエレベータ(籠を複数装着した輪状のチェーンやベルトを縦置きにし、粉粒体を上下に移動させる装置・・・スキー場のリフトを天地に配置した感じ)が設置されていますが、ゴテゴテしたディテールと朽ちっぷりがいい味出してます。 実はこの塔、調子に乗って作り込んだものの、遠景で頂部が少し見えるのと、手前のコンクリ製サイロ横を通過するときに、塔体が一瞬見える程度というシャイっぷりが非常に残念・・・。マァ作る前から分かっていたことですが、これはほとんど個人的趣味の領域です。 おどろおどろしいほどのコンクリートの染みや、塗装が剥がれ落ちて錆が浮き放題の鉄部。「不気味」「汚い」と評されるだろう朽ち加減ですが、私としてはまるで年輪のように、幾年の時間を重ねてきたことによる美しさを感じさせられます。 これまで作ったサイロは円形を作るのが億劫だったため、円周の長さで板状に作ってから「金太郎飴」で丸める・・・という手法を取っていました。それはそれで別に良いのですが、転落防止柵も板状に一体で作ってから丸めていたため、中央部はともかく両サイドは面を横から見る角度になり、ペラペラで視認できなくなる欠点がありました。 今回はサイロ本体も含め頂点手打ちで作りましたが、本来パイプで組まれている柵を平板で表現しているのは従来と変わりありません。ただし、縦方向のパイプを作るときに、全ての面が正面を向くように座標打ちしましたから、両サイドのパイプも消滅せず描画されるようになりました(基本的には「伊那大島駅2」で解説した手法と同じ)。 各パイプに陰影や浮き錆を表現したテクスチャを貼ることも検討しましたが、実際の視点ではあまりに細く、アンチエイリアシングのかかり具合によってはギラギラと明滅して描画される可能性があるので、ソリッドのままとしました。また、明るい空をバックにシルエットを描く程度の表現を期待していますので、実際の色よりも少し濃い目の配色にしています。 住友セメントから更に駅寄りの鉄工所も、汎用ストラクチャを廃し、実写ベースの専用ストラクチャに置き換えました。実はこちらを先に作ったのですが、手前のサイロがデカ過ぎて本来のタイミングで見えない・・・というわけで、サイロ群の再製作となったのです。 こちらも負けず劣らずの荒れっぷり。しかも度々増改築を繰り返したような構造の複雑さ、節操の無い建材のチョイスが魅力的で、創作意欲をそそられます。多少のアレンジはありますが、基本的にそのまま立体化しています。 相変わらず、運転台から見える範囲+αしか作っていません。資材置き場と思われる赤いトタン屋根は、こうして上から見ると余りに適当なテクスチャですが・・・運転台の高さから見ると、上の画像のようにちゃんと見えるのがアラ不思議。このあたりの「テクスチャ芸」も、色々とコツが掴めて来たように思います。 灰色のスレート屋根は、本来線路側の張り出し部に合わせて用意したものですが、母屋の屋根にも使い回してメモリ消費量を軽減しています。というのも、運転台からの視点だと母屋の屋根はほとんど見えないはず・・・なのですが、もしかすると運転台の高さによっては見えてしまうかも・・・?という微妙な具合なのです。まぁ、テキトーに塞いどきゃ良いかな?という程度。 トタン、スレートといった波板類は縞々模様の画像にしたくなるものですが、ああいったパターン画像は、浅い角度から見るとモアレ(画像のドットと画面のドットが競合して意図しないパターンが描画される現象)の発生源になりますので、解像度を落とす、コントラストを落とす、いっそ波板表現はやめる・・・などの試行錯誤が必要です。画像単体ではなく、運転台からの視点で最適に描画される画像を作り出すように心掛けましょう。 余談になりますが、サイロの画像に登場したので柵のお話です。今回から汎用ストラクチャのコンクリ柵を、新しいものに置き換えました。以前から使っていたストラクチャも立体化したものでしたが、均一な並びの支柱があまりに画一的で実感的で無いため、新規に作り直しました。 新ストラクチャに求めるものは、何かにつけて持論を展開している「グニャグニャ感」。支柱の角度や高さをそれぞれ微妙に変化させ、アングル材もそれに沿わすように曲げつつ設置しました。また1枚の画像を使い回していた支柱のテクスチャも、今回は10パターン以上用意し、ランダムに貼り付けました。 旧作のストラクチャも横方向から眺める分には、さほど違和感が無かったのですが、運転台の視点から見ると問題は顕著に現れます。 同じ形で同じ高さの支柱が等間隔で並び、その上同じテクスチャを貼っているので、支柱が重なって見える角度ですと連続したパターン画像のようになってしまいます。 119系電車を立体化する際にも書きましたが、「テクスチャ1枚の板ストラクチャより見劣りするのであれば、立体化などしないほうがマシ」、というのを地で行ってる感じですね。例えば、mackoy氏謹製の京成線に於ける線路際の古枕木柵、あれは実に見事なテクスチャ芸ですね。中途半端な立体ストラクチャより、余程見栄えがするというものです。 というわけで、やるのならばテッテー的に、新作は一本一本微調整しながら作りました。まだどこか自然さが不自然?なので、満足し切れていないのですが、とりあえず連続パターンからは脱出できたのでヨシとします。 テクスチャを差別化したことにより、画像ファイルの容量増加が懸念されますので、1本あたりの画素数は減らしました。旧作より少しボヤケて見えますが、まぁ・・・走行中に見る分にはこれで必要十分でしょう。