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伊那福岡再考

ファイル 48-1.jpg  小町屋、駒ヶ根に引き続き、「できるだけ実際の景色をそのまま立体化する」をテーマに、伊那福岡駅周辺を作り直しました。以前も書いたような気がしますが、伊那福岡のセメントサイロをリアルにしたかったというのが、路線データのリニューアルを始めたきっかけで、その頃から数えて実に4度目のサイロ製作です。細かなディテールの変更や追加はあるかもしれませんが、大まかにはこれが完成形・・・と思いたいところ。  動画「その4.9」に登場した3代目ストラクチャも、そこそこイイ線行ってたと思うのですが、実はアレ、実物の1.5倍くらいのサイズだったのです。大きいモノをより大きく見せて迫力を出そうという意図だったので、ある程度わかってやっていたことなのですが、周辺の作り込みが進んでくると、他のストラクチャとのサイズ比や、土地面積のバランスがおかしくなってしまうので、ほぼリアルサイズで作り直しました。ただ、まんま実寸だと余りに迫力不足でしたので、一割程度大きめに作っています。  こうした表現上のデフォルメは、実写録画映像のシミュレータではできないことですね。例えば、誰でも知っているようなランドマーク的な建築物を、今回の様に少し大きく作って目立たせるとか、実際は角度的に運転席からほとんど見えないのだけれど、少し線路に寄せて配置してみるとか、本来は手前にある木々や住宅が邪魔して見えにくいのだけれど、それらを少し端折って目立たせる・・・といった「嘘」は、好き嫌いがあると思いますが、楽しみを演出する上でアリだと思います。  とはいえどの程度までの嘘が許容されるかは難しいところで、またもや「某列車で行こう9」を引き合いに出して申し訳ありませんが、全体的にリアルな造形の中で、一部のオブジェクトのサイズだけを2倍にまで大きくして「デフォルメ表現だ」と言い張るのは、いささかセンスが無さ過ぎるというものです。 ファイル 48-2.jpg  最初の画像は国道153号(三州街道)の跨線橋からズームしたイメージ、そして今度は線路脇の生活道から仰ぎ見る感じで。  奥の金属製サイロの横には四角い塔状のバケットエレベータ(籠を複数装着した輪状のチェーンやベルトを縦置きにし、粉粒体を上下に移動させる装置・・・スキー場のリフトを天地に配置した感じ)が設置されていますが、ゴテゴテしたディテールと朽ちっぷりがいい味出してます。  実はこの塔、調子に乗って作り込んだものの、遠景で頂部が少し見えるのと、手前のコンクリ製サイロ横を通過するときに、塔体が一瞬見える程度というシャイっぷりが非常に残念・・・。マァ作る前から分かっていたことですが、これはほとんど個人的趣味の領域です。  おどろおどろしいほどのコンクリートの染みや、塗装が剥がれ落ちて錆が浮き放題の鉄部。「不気味」「汚い」と評されるだろう朽ち加減ですが、私としてはまるで年輪のように、幾年の時間を重ねてきたことによる美しさを感じさせられます。 ファイル 48-3.jpg  これまで作ったサイロは円形を作るのが億劫だったため、円周の長さで板状に作ってから「金太郎飴」で丸める・・・という手法を取っていました。それはそれで別に良いのですが、転落防止柵も板状に一体で作ってから丸めていたため、中央部はともかく両サイドは面を横から見る角度になり、ペラペラで視認できなくなる欠点がありました。  今回はサイロ本体も含め頂点手打ちで作りましたが、本来パイプで組まれている柵を平板で表現しているのは従来と変わりありません。ただし、縦方向のパイプを作るときに、全ての面が正面を向くように座標打ちしましたから、両サイドのパイプも消滅せず描画されるようになりました(基本的には「伊那大島駅2」で解説した手法と同じ)。  各パイプに陰影や浮き錆を表現したテクスチャを貼ることも検討しましたが、実際の視点ではあまりに細く、アンチエイリアシングのかかり具合によってはギラギラと明滅して描画される可能性があるので、ソリッドのままとしました。また、明るい空をバックにシルエットを描く程度の表現を期待していますので、実際の色よりも少し濃い目の配色にしています。 ファイル 48-4.jpg  住友セメントから更に駅寄りの鉄工所も、汎用ストラクチャを廃し、実写ベースの専用ストラクチャに置き換えました。実はこちらを先に作ったのですが、手前のサイロがデカ過ぎて本来のタイミングで見えない・・・というわけで、サイロ群の再製作となったのです。  こちらも負けず劣らずの荒れっぷり。しかも度々増改築を繰り返したような構造の複雑さ、節操の無い建材のチョイスが魅力的で、創作意欲をそそられます。多少のアレンジはありますが、基本的にそのまま立体化しています。 ファイル 48-5.jpg  相変わらず、運転台から見える範囲+αしか作っていません。資材置き場と思われる赤いトタン屋根は、こうして上から見ると余りに適当なテクスチャですが・・・運転台の高さから見ると、上の画像のようにちゃんと見えるのがアラ不思議。このあたりの「テクスチャ芸」も、色々とコツが掴めて来たように思います。  灰色のスレート屋根は、本来線路側の張り出し部に合わせて用意したものですが、母屋の屋根にも使い回してメモリ消費量を軽減しています。というのも、運転台からの視点だと母屋の屋根はほとんど見えないはず・・・なのですが、もしかすると運転台の高さによっては見えてしまうかも・・・?という微妙な具合なのです。まぁ、テキトーに塞いどきゃ良いかな?という程度。  トタン、スレートといった波板類は縞々模様の画像にしたくなるものですが、ああいったパターン画像は、浅い角度から見るとモアレ(画像のドットと画面のドットが競合して意図しないパターンが描画される現象)の発生源になりますので、解像度を落とす、コントラストを落とす、いっそ波板表現はやめる・・・などの試行錯誤が必要です。画像単体ではなく、運転台からの視点で最適に描画される画像を作り出すように心掛けましょう。 ファイル 48-6.jpg  余談になりますが、サイロの画像に登場したので柵のお話です。今回から汎用ストラクチャのコンクリ柵を、新しいものに置き換えました。以前から使っていたストラクチャも立体化したものでしたが、均一な並びの支柱があまりに画一的で実感的で無いため、新規に作り直しました。  新ストラクチャに求めるものは、何かにつけて持論を展開している「グニャグニャ感」。支柱の角度や高さをそれぞれ微妙に変化させ、アングル材もそれに沿わすように曲げつつ設置しました。また1枚の画像を使い回していた支柱のテクスチャも、今回は10パターン以上用意し、ランダムに貼り付けました。 ファイル 48-7.jpg  旧作のストラクチャも横方向から眺める分には、さほど違和感が無かったのですが、運転台の視点から見ると問題は顕著に現れます。  同じ形で同じ高さの支柱が等間隔で並び、その上同じテクスチャを貼っているので、支柱が重なって見える角度ですと連続したパターン画像のようになってしまいます。  119系電車を立体化する際にも書きましたが、「テクスチャ1枚の板ストラクチャより見劣りするのであれば、立体化などしないほうがマシ」、というのを地で行ってる感じですね。例えば、mackoy氏謹製の京成線に於ける線路際の古枕木柵、あれは実に見事なテクスチャ芸ですね。中途半端な立体ストラクチャより、余程見栄えがするというものです。  というわけで、やるのならばテッテー的に、新作は一本一本微調整しながら作りました。まだどこか自然さが不自然?なので、満足し切れていないのですが、とりあえず連続パターンからは脱出できたのでヨシとします。  テクスチャを差別化したことにより、画像ファイルの容量増加が懸念されますので、1本あたりの画素数は減らしました。旧作より少しボヤケて見えますが、まぁ・・・走行中に見る分にはこれで必要十分でしょう。

改装、改装、また改装。

 前回の動画から既に2ヶ月、実はまだ小町屋周辺の風景には手を付けていません。・・・ならば今まで何をしていたのかをこちらでご報告。今回は大きな画面でご覧の方にディテールが伝わるよう、いつもより大きいサイズ(1600x1000)のスクリーンショットを掲載しました。小さい画面でご覧の方は、ブラウザが縮小表示してくれるかな? ファイル 3-1.jpg  まずは線路周りの基本的な部分を総合的に見直しました。前回の動画でも少しお話ししましたが、線路図によって得られた正確な線形情報に加え、取材にて判明したキロポスト、風景との位置関係をできるだけ再現。現状ではBVEのレールが25mきざみですので~12.5mの誤差は発生しますが、まず問題のないレベルでしょう。 次に、画面上では勾配の感覚が掴みにくいうえBVE4では補助的な表示機能もありませんので、勾配標に実際の数値を入れるようにしました。延伸予定区間に必要な分も含め、作った勾配標は実に81種類。  それから以前より気になっていた線路・築堤のオブジェクトを総入替しました。従来のモノはOpenBVEで全方向から見ることも考慮し、「どの角度から見ても破綻しないが、どの角度から見てもそれなり」という作りでした。しかし、あくまで運転がメインのBVEですから、運転台から見た状態で一番それらしく見える方が良いかと割り切りました。おかげで枕木やバラストの立体感は以前の比ではありません。また従来は枕木とバラストをクッキリ色分けして「線路らしさ」を重視した表現にしていましたが、今回はリアルかつより自然に見えるように、また周囲の景色とシームレスに融合するよう心がけて調整しました。  築堤の改良にあわせて、線路際の雑草も作り込みました。標識が草に埋もれて見えにくくなってるのが良い感じです。まだバリエーションも少なくいささか単調ですが今は仮置き、こうしうた「繰り返しオブジェクト」の類はBVE5対応時に本気出します。 ファイル 3-2.jpg  これも動画内で触れましたが、一部建築物のテクスチャを実写化しています。撮り貯めた実物の写真からテクスチャを起こしていますが、さすがにリアル、かつ作るのが楽です。これまでのようにCGで一から描き起こそうすると、影や汚れの質感表現に時間を取られるのです。  とはいえ実写には実写の苦労もあります。影の方向がBVE内とは違ってそのまま使えなかったり、手前に写り込んだ障害物を消す作業が必要だったり、曇天時や夕方に撮った写真は色合いの調整が難しい・・・などなど。  テクスチャ解像度は高めに設定していますが、本家BVEでは全てのテクスチャをメモリ上に読み込んでいるのか、全体の容量が大きすぎると動かなくなります。対してOpenBVEでは描画中のテクスチャのみ随時読み込んでいるようで、メガ単位のテクスチャをバンバン使っても平気で描画してくれます。  ちなみにこの伊那福岡のセメント工場、周辺の道路や住宅、踏切や場内信号機との位置関係は少し間違いがあるので後日修正予定。今はツッコミ不可でお願いします。 ファイル 3-3.jpg  BVEの飯田線といえば七久保駅が起点というイメージですので自ずと力が入るところですが、まだ途中ではあるものの七久保らしさがかなり出てきました。下のスクリーンショット集にある初期のものと比較してみると、各種建物や旧貨物ホームのリアル化(分岐器周辺の建築限界によるエグリも再現)、作業側線の線形見直し、沿線電話機・入換信号機・インピーダンスボンド(少し大きすぎたかも)・列停標識の配置などなど・・・。標識類があれば雰囲気ぐんと良くなりますので、全線にわたってもっと色々配置していこうと思います。他の作者様のデータを運転しているといつも思うのですが、グリーンマットの路線データでも、そのあたりの再現度が高いと飽きずに運転できますし、なによりも説得力がありますね。  ◆2010/2/22追記 L型停目のポール・ホーム端の柵の作り直し、一部架線柱の精密化が進みましたので、画像を入れ替えました。下に書いた複線間隔の修正と、それに伴う調整が終わればほぼ完成かな。 ファイル 3-4.jpg  線路のオブジェクトはカーブレール含め置き換えましたが、ポイントだけは従来のまま放置していたので根本から作り直しています。これまでのモノはカーブレールの流用で作ったデータでしたが、、分岐側のフログから先も曲線を描いたため不自然なSカーブができてしまうのが不満でした。線路の総入換を良い機会として、真面目に8番ポイントを作ってみることにしました。  CADソフトは持っていませんので、Adobe Illustratorで図を描いていきますが、描画範囲の限界で実寸では収まりませんでしたので、1/10スケールで描いています(右の画像参照)。  まずは基準となる25m直線を引き、右隣に他線を引きます。現状のデータでは複線間隔が5mに設定されていましたが、広すぎるように感じるので標準的な3.8mに修正し、また両線の中間にガイドラインを一本引きます。  次に分岐側のフログから先の直線部分を引きますが、8番ポイントは8m進んだ時に1m横に分岐するので、計算すると分岐角は7.15度。複製した自線を 7.15度回転させ、先端を中央のガイドラインに合わせて配置します。そして自線と交差するところがフログになりますので、そこから手前は削除。  最後に自線とフログまでを適度な曲線(きつすぎても緩すぎてもラインが破綻するので試行錯誤)で結べば大まかなラインはできあがり。これが厳密にリアルなのかどうかはわかりませんが、とりあえず誰が見てもリアルに“見える”ポイントは出来ると思います。  今はガードレールなどの位置調整をしているところで、次にトングを開通方向毎に料理してやれば完成です。Illustratorはカーソルの座標を数値で表示してくれるので、これを元にCSVを手入力していくことになります。曲線部分は全体の2/3程度ですので、10分割もすれば完全な曲線に見えるでしょう。  問題はテクスチャかな・・・。これも実物写真をベースに作ることになりますが、各レールとの位置合わせが難しいうえ、影や凹凸の方向は固定されているため前・後・左・右それぞれにテクスチャを用意しなくてはいけません。先は長い・・・。

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